「10時を過ぎたら迷わず店に入れ!」
夜9時半。とりあえずタクシー運転手に案内してもらったのは「こらんしょ横丁」という屋台村。ゴールデン街のように小さな店が並んでいる。金曜の夜だけあってたいそうな賑わいだ。「福島の夜は早いからね」という運転手の忠告に従って、脇目もふらず、さらなる奥地を目指す。しばらく歩くと無料案内所が……。キャバや“お楽しみ情報”を店員に聞くと、またもや「今日はどこもいっぱい。10時を過ぎたら迷ったらダメ!」と追い打ちをかけられる。結局「今、空いたばかり」というキャバクラ「B」を紹介してもらった。
「野球観にいってたんでしょ?」と笑いながら出迎えてくれたのはHちゃん。「今年はプロ野球が開催されないと思ってたから、本当によかった」と安堵のご様子。年に一度の巨人戦の夜は稼ぎ時なのだ。
震災当初の話を聞くと、仙台と同じく「ひと月はお客が来なかった」そう。しばらくして街は活気づいたというのだが、その理由には考えさせられた。福島の人は仙台が近いこともあり国分町などへの“遠征組”が多く、地元は割を食っていた。しかし、震災後、「福島から来た」というだけで県外の繁華街からは敬遠され、多くの人が地元で飲まざるを得ない状況に陥ったというのだ。「地元にカネ落ちるから結果オーライ」と明るく笑い飛ばすHちゃんに見送られ、お次は老舗スナックの「F」へ。
「いらっしゃ〜い」。明るく元気なママさんに促され入店。カラオケが響く広めの店内は盛況だ。カウンターに座ると、またもや「野球の人?」と質問が。「今日のウチのお客さん、みんな野球帰りなのよ」。
と、紹介された隣の紳士はオレンジ色のポロシャツを着ている。
福島は伝統的に巨人ファンの多い土地。一見はまず空気に溶け込まなくては……。「いやぁ、東京から来たんですけど、巨人弱いすね、参りました」とママにお愛想を言うと、「え? 野球と言ったらサイウチ君でしょ」と見事な肩透かし。地元では、先ごろ甲子園出場を決めた聖光学園の超高校級、歳内投手の話題で持ちきりらしい。
女のコたちと歳内投手の話で盛り上がっていると、カウンターの上の貯金箱が目に入った。「未来の福島の子供のために募金してくれますか?」とCちゃんに言われ、早速募金。すると手首をとられ「がんばろう!ふくしま!」と書いたリストバンドを着けてくれた。
「こんなときだけど、せっかく福島に来たからには楽しんで」と、県内の見どころや旨いラーメン屋などを親身になって教えてくれる女のコたち。心の中でつぶやく「がんばろう!ふくしま!」。女のコたちに勇気をもらった。
飲んで歌って騒いで“絆”も深める夜
協力・撮影/O氏(夜遊びガイド)
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苫米地 某実話誌で裏風俗潜入記者として足掛け5年。新天地でヌキを封印。好きなタイプは人妻
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