ネットで話題の“MC先生”ぬまっちが教える「児童のやる気を引き出す教育法」

 アメリカで培ったチームビルディングというコミュニケーション法を駆使し、さらには日本のバラエティ番組における「MCとひな壇芸人」の関係性を授業に持ち込み、「児童のやる気を引き出す天才」として話題の小学校教諭・沼田晶弘。一介の小学校教諭ながら、Twitterのフォロワーは3万人を超える。「子供の世界は好きじゃない」と語る沼田先生の、児童のやる気を引き出すカラクリに迫る。

沼田晶(小学校教論) 子供が言うことを聞かない、子供の気持ちがわからない、勉強しろと言っても効果がない……いつの世も、親や教師を悩ませる問題だ。しかし、彼の型破りでユニークな教育法にかかれば、児童はめきめき力を伸ばすという。“ぬまっち”の愛称で親しまれ、SNSを中心に熱い注目を浴びる彼のやり方は、なぜ子供の心を掴み、成果を挙げているのだろうか。

――沼田先生のクラスの児童は、自ら楽しんで勉強すると聞きました。なぜそんなことができるんですか?

沼田:自分の子供時代を思い返してください。たぶん勉強って嫌々やってましたよね? でも、大人になってから「もっとちゃんと勉強しとけばよかった」とやり直す人は多いでしょ。人は、勉強する意味や目的がわかって初めてやる気になるんです。だから僕は、子供たちが思わずやりたくなる目標を設定して、「やりたいことをしていたら、いつの間にか勉強しちゃってた!」という仕組みをつくるようにしたんです。

――具体的にはどんなやり方をしているのでしょうか。

沼田:単に「食べたいものをテーマに作文を書いてください」と言っても子供たちは書きたがらないけど、「カップラーメンの作り方をなるべくドラマチックに書いてみて」と言うと、なんか楽しそうってみんなやる気を出すんです。しかも、知らず知らず説明文の書き方も学べちゃう。

――学習する目標を、児童が興味の持てる言い方に変えてあげる、と。

沼田:僕のクラスでは、やりたいことがあったら有志を集めてプロジェクト〈※1〉を立ち上げるんですが、今その数が20~30もあるんです。つまり、一人が3つも4つも掛け持ちしてる。その中には「ONT(織田信長ティーチャー)」や「EBT(江戸文化ティーチャー)」といって、僕の代わりに歴史の時間に授業をする“ティーチャー系”のチームもあります。ひとつのテーマだけを深掘りするから、みんな驚くほど詳しく調べてきますね。でも、彼らに「一日何時間くらい勉強してる?」って聞いたら、「ほとんどやってない」って答えるんです。プロジェクトは好きなことをやってるだけで、勉強だと思ってないみたいで。こういうの、「アナザーゴール方式〈※2〉」っていうんです。

〈※1 プロジェクト…ティーチャー系以外にも、各種コンテストやコンクールに応募するプロジェクトや、クラス運営に関わるプロジェクトなどもあり、いわゆる係活動はない。発案者のほかに1人以上の賛同者がいればプロジェクト成立となる〉

〈※2 アナザーゴール方式…本来の目標や目的とは異なることを、結果的に学ばせる手法のこと。「子供たちが30人31脚に出場したいと言い出したときは、国語の時間に『速く走れる必勝法』を書かせたり、算数で『ゴールまでの歩数や距離』を計算するなど、30人31脚のための特訓が、結果的に勉強になっているような仕組みをつくりました」(沼田)〉

試合に出た人間だけが負けられる


――クラス全体で賞金獲得を目標にして、さまざまな作文コンテストや新聞コンクール〈※3〉などにも応募しているそうですね。

沼田:それもプロジェクトの一環で、何に応募するかは子供たちの自由。自分の好きな分野や得意な分野を徹底的に役割分担して、「賞金獲ってうまいもん食いにいこうぜ!」と呼びかけました。去年のクラスは、実際に集めた賞金でヒルトンホテルのバイキングと、よしもとのお笑いを見に行きましたよ。

〈※3 さまざまな作文コンテストや新聞コンクール…2年前に担任したクラスでは「学校自慢エコ大賞」で優秀賞と賞金3万円をゲットし、見事ヒルトンホテルのバイキングを達成。本年度のクラスは「リムジンに乗って帝国ホテルのバイキングに行く」ことを目標に活動してきた〉

――児童が賞金目当てに取り組むことに批判的な人もいるのでは?

沼田:そこは、保護者の方にはきちんと説明して理解をいただきました。うちは大学附属の教育研究校〈※4〉なので、実験的な授業ができる校風もありますしね。それに、賞金を目標にはしているけど、子供たちにとってそれは、社会に評価されたり、クラスに貢献できたといった喜びをわかりやすく数値化してくれる、経験値やポイントみたいなものなんです。単にお金が欲しくてやっているわけじゃないんですよ。

〈※4 教育研究校…文部省や各自治体によって指定された、特定のテーマについて実践的な授業を研究・発表する学校。ときに教科書を離れた自由で実験的な授業を行い、児童・生徒の反応や成果をはかる〉

――入賞できた子とできない子の間に、格差や劣等感が生まれたりはしないんですか?

沼田:実際は入賞した数の10倍以上は応募していて、はっきり言ってほとんど落ちてるんです。でも、僕はいつも「負けることができるのは、試合に出場した人だけ。試合にも出ないのに、負けた人を笑ったり、失敗を恐れる人間にはなるな」と言っています。成功するためには、たくさん失敗して当たり前だと教えるんです。

*このインタビューは1/26発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』から一部抜粋したものです
<取材・文/福田フクスケ 撮影/江森康之>

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