「叱られるのは期待の裏返し」は本当か?

【佐藤優のインテリジェンス人生相談】
“外務省のラスプーチン“と呼ばれた諜報のプロが、その経験をもとに、読者の悩みに答える!

◆「叱られるのは期待の裏返し」は本当か?
白いカラス(ペンネーム)・会社員・男性・25歳


「叱られるのは期待の裏返し」は本当か?

※写真はイメージです

 厳しく叱られるのは期待の裏返しだというのは本当でしょうか?

 最近、今までにやったことのないような仕事を任されていますが、それだけに怒られることも多いです。友人には「期待されてるからこそ仕事を任されてる」「期待してないヤツには怒らない」と慰められ、そうなのかとも思うのですが。

 イベントなどでは佐藤優さんもスタッフにはかなり厳しいという噂ですが? それも期待の表れですか? 期待してないスタッフには怒りませんか?

◆佐藤優の回答

 一般論として、「厳しく叱られるのは期待の裏返しだ」というのは事実です。能力が低く、期待できない人を叱っても時間の無駄だからです。「こいつはダメだ」と思ったときに私は、「この仕事はやらないでもいいですよ。これまで助けてくれてどうもありがとう」と優しく言って、その後はこういう人を自分の周囲に近づけないようにします。

 私は、イベントなどで関係者に厳しく接したことがありません。もっとも、イベント関係者に軽く見られるような隙も絶対に見せません。基準に達しない相手とは仕事をしないようにするだけです。外交官は公僕ですから、「こんな奴と付き合いたくない」と思っても、仕事だから付き合わざるを得ません。作家は自由業ですので、付き合いたくない人とは、基本的に関係を持たないでも生きていくことができます。

 さて、いくら期待されても、叱られてばかりだと疲れてしまいます。特に「脳疲労」に注意する必要があります。ストレスケアの専門家である徳永雄一郎先生は次のように言っています。

《うつ病はある日突然に襲ってくるわけではありません。うつ病にいたるまでには段階があります。私は、このうつ病になる前の状態を二つの段階にわけて「脳疲労」と「脳不調」と呼んでいます。/「脳疲労」は初期の段階で、頭の働きが悪くなった状態。「脳不調」はさらに疲労が蓄積して、頭が働かなくなった状態です。特に「脳不調」はうつ病寸前の段階である「前うつ病状態」です。うつ病にまで悪化しますと、休職などの対応が必要になってきます》(『「脳疲労」社会』7頁)。

 うつ病を発症させてしまうと、面倒ですから、その前に手を打つ必要があります。組織(会社)にも「脳疲労」「脳不調」があります。あなたが叱られることが、組織の疲労によって生じている場合は、注意しないと、ストレスに押し潰されてしまいます。この点についても徳永先生の以下の見解が示唆に富んでいます。

《どのような組織でも、成長する部分と退行する部分を同時に備えています。退行現象とは、組織として脳疲労が発生し、成長や変化することに抵抗を示し、集団として受動的になって問題解決を待つだけの状態を指します。(中略)組織の退行現象の背景には、個人の意見が集団のなかに埋没していることがあります。言い換えると、自分の意見を持たない人びとによって成立している組織に生じやすいと言えます。そのため建前が先行し、組織の難しい現実を直視せず、問題解決に進むことが妨げられていると思われます。》(同195頁)

 あなたの会社の健全度をチェックしておきましょう。叱るだけでなく、仕事の仕方について、適切な指導がなされているでしょうか。努力に見合った賃金と昇進が保障されているでしょうか。組織が健全ならば、叱られることを「将来の肥やしになる」と前向きに受け止めていいと思います。

【今回の教訓】
期待できない人を叱っても時間の無駄

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【佐藤優】
’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』のなど著書多数。最新刊は『90分でわかる日本の危機』

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