青森県民は「イギリス」にも「トースト」にも誰も疑問を抱かない
どの地域にもそこでしか食べられないものはある。青森県の「イギリストースト」もそのひとつだ。これを知らなければ「おめぇ、もぐりだべ!」とヤジられてしまうほど、青森県民にとってはその存在が当たり前になるほど長く愛され続けている。かつて「県民ショー」でも取り上げられている。
筆者も青森出身で子供の頃から食べてきた。「お昼はイギリストーストよ」は当たり前。なのに、東京にきて、このネーミングを出したら、みんなに目をまん丸くされた。っていうか、全国区じゃないのかよ! よくよくそもそも青森なのにイギリストーストって何だよ? 自分でも今までにない疑問が湧いてきた! ということで改めて紹介しよう。
イギリストースト、そもそもトーストされていない……
「イギリストースト」定価は105円だが、スーパーなどではよく80~90円で安売りされており、筆者はよく安い店で購入していた。袋をあけると、普通の食パンが2枚入ってる。
「っていうか、トーストされてないじゃん!」
よその人(青森県民以外)はだいたいそう思うだろう。でも青森県民はほとんど疑問に持たないらしい。さて、その疑問は後ほどお答えするとして、2枚のパンの中身はこうだ。
ちなみに分けて食べるんじゃなくサンドして一気に喰らうのだ
マーガリンとグラニュー糖がサンドされてあるのみ! 砂糖のじゃりじゃりした食感とマーガリンとパンの相性が申し分ない。ぶっちゃけ飛び上がるほどおいしいわけではないが、当たり前のように食べてきただけあり、帰省すると必ず食べてしまう。
しかも、裏の表示を見ると、450kcalを超え、かなりのハイファットフードだということがわかった! 部活をやっていた学生時代はよかったが、大人になって食べ過ぎると結構ヤバイのだ。
筆者が先日の帰省の際、大型スーパーで撮影してきた
大型スーパーにいくと、実はたくさんの種類のイギリストーストが大量に売られてある。実は1日に7000~10000個も製造されているという。県内だけで!
普通のイギリストースト(マーガリン砂糖)のほか、「マロンクリーム&ホイップ」「小倉&マーガリン」「粒入焙煎ピーナツ」「ブルーベリージャム&チーズクリーム」「コーヒークリーム」などなど。今もまだなお新作が登場し続けている。どうだ、このくらい青森では存在感がデカイのである。
よく東京では「そんなの自分で作れば!」と白けられるのだが、「無理だ」と答えたい。工藤パン(製造元)がつくったからイギリストーストなんである。実に8時間もかけて製造している(関係者)というから驚きだ。その日の気温やマーガリンの状態によって変わるのだという。
「一度、やってみたことがあるが、何か違う! かっちゃ(母親)のカレーを同じように作れないのと一緒だ。だから買ってでも食うんだよ!」(某青森県民の主張)
イギリス大使館に許可を取っていたらしい
青森県PRの担当者にイギリストーストの資料を送っていただくことに。そこには、「青森なのになんでイギリスっつぅんだ?」という第一の疑問に対し、「山型のパンをイギリスパンというところからきています」と書かれてある。なるほど!
ちなみに、焼いてないのにトーストという点に関しては、「イギリスサンドとネーミング変更する案もあったそうですが、イギリストーストの品名が周知されてしまったため、そのまま使用され現在に至っています」とのこと。
これも東京で言われたのだが、「勝手に国旗までつけて、イギリス人に訴えられちゃうよ」と言われるのだが、資料によると、「イギリス大使館には快諾いただいた」と書かれてある。なかなか律儀だろう、青森県民は!
というわけで、青森についたら、観光する前に、ぜひイギリストーストを買いに走ってほしい。 <取材・文/まいまい(青森市出身)>