たかが枝豆と侮れない!青森県のソウルフード“毛豆”最強決定戦
青森県弘前市。田んぼが黄金色に染まる秋。ここで密かに繰り広げられた熱き戦いがある。9月22日夜、津軽屋台村かだれ横丁にて開催された「最強毛豆決定戦2017」。だが、“毛豆”と言われてもなんのことだかサッパリわからない読者がほとんどではないだろうか(笑)。
毛豆とは、青森県在来の枝豆で、通常に比べてサヤが大きく、全体が金茶色の毛で覆われていることが特徴だ。そして、濃厚な味わいとほっくりとした食感……。青森県民にとってはソウルフードとも言える。
毛豆は、作り手によって見た目から味わい、風味がまったく異なるそうだ。参加者たちはそれぞれがこの日のために試行錯誤を重ね、王者の座を目指す。今回で5度目の開催となる同大会だが、前回グランプリを獲得したのは長内将吾さん。もともとは調理師をしていたが、そのときに祖母が晩酌用にと出してくれた毛豆の味が忘れられず、農業の道に進んだ。以降は、毛豆の栽培を極めるために研究を続けている。これまでの大会で何度も入賞した経験があり、毛豆界では“毛豆王子”とも呼ばれる。周囲から2連覇に大きな期待がかかる。
「今年は畑の実なりも良かった。塩に頼らず、豆本来の味で勝負できる。自信ですか? もちろんあります」(長内さん)
毛豆をめぐる人間ドラマを感じるが、大会では生産者名は伏せられた状態で出され、一般の審査員が食べて投票する。つまり、同情票や組織票、マニア票などはなく、純粋においしいものが決められる仕組み。
テーブルには、参加者が手塩にかけて育てた11種類の毛豆が並ぶ。和やかにワイワイと楽しみながら、議論は真剣。「3番は栗っぽい感じがする」「8番は小さい頃から食べてきた馴染みのある味」など、テーブル毎に様々な意見が飛び交っていた。
また、東京から4回目の参加だという男性は「今年もレベルが高くて本当に迷う。段々と味の違いがわかるようになってきた」と話す。果たして、本当にそこまで違うのだろうか。記者も実際に食べ比べてみたが、粒の大きさから味わい・風味までまったく異なることに驚いた。
毛豆は、米が凶作の年でも育つことから、田植えの後に、苗代や畑のすき間に種が播かれてきた。一般的な枝豆の最盛期は真夏だが、毛豆は9月終盤から10月上旬が収穫期。農家にとっては貴重な保存食であり、そのほとんどが県外不出で自家消費されてきた。
とはいえ、ぶっちゃけ枝豆でしょ……と侮るなかれ。今回は「うちの毛豆がいちばん!」というプライドをかけた、一世一代の大勝負をリポートする!
純粋に味のみで決められる最強毛豆決定戦
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明治大学商学部卒業後、金融機関を経て、渋谷系ファッション雑誌『men’s egg』編集部員に。その後はフリーランスとして様々な雑誌や書籍・ムック・Webメディアで経験を積み、現在は紙・Webを問わない“二刀流”の編集記者。若者カルチャーから社会問題、芸能人などのエンタメ系まで幅広く取材する。X(旧Twitter):@FujiiAtsutoshi
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