最貧困にあえぐ無職のシングルマザーが「役所から児童扶養手当を断られた理由」
流行語大賞にノミネートされた「下流老人」をはじめ「貧困女子」や「ワーキングプア」など、さまざまな角度で切り取られる日本の貧困問題。いまや性別・世代を問わずに貧困層が拡大し、「最貧困」と呼べる苦境に陥っている人も増えている。そして、それは単に収入という尺度だけで測れる問題ではない。果たして「最貧困」層と呼ばれる人々のどん底生活とはいかなるものか? ここでは、ある女性のエピソードを紹介しよう。
友人からの出産祝いの品物を受け取るとき「お金を貸してほしい……」という一言を大橋早苗さん(32歳・仮名)さんは必死に飲み込んできた。都内在住の彼女は愛らしいベビーグッズに囲まれながら、日々心身の飢餓感に苦しむ。発端は昨年の夏に不倫相手の子供を身籠ったことから始まった。
「堕ろすことも考えていたら、医師から子宮頸がんだと告げられました。事実上、『生涯最後の妊娠』です。女としてやはり子供を産みたいという思いが出てきて……。結局、シングルマザーとして生きていくことを決意しました」
お腹の子の父親から養育費援助の話も出たが、大橋さんはキッパリ断り、以降まったく連絡をとっていない。それは彼女の最後の意地だったのだが、現実問題、困窮は日に日に色を濃くしている。
「妊娠中は抗癌剤の薬のせいもあり、ほとんど寝たきりの生活。貯金を切り崩しながら、買い物だけは親しい男友達に頼んでいて……」
今年の夏に出産。そして即・子宮頸がんの手術で、大橋さんの体に大きな負担がかかってしまった。体調はなかなか戻らず、役所に児童扶養手当を申請へ。しかし……。
「特定の異性が定期的に出入りしている場合は支給できないと言われました。ただ男友達に買い物を頼んでいただけなのにバカバカしい。区のケアワーカーが見回りするらしく、近隣住民の通報もあるそうで、諦めたんです」
大橋さんは早くに両親を亡くし、唯一の身内である弟も15年近く連絡を取っておらず絶縁状態だとか。親にも、国にも頼れない。体に無理してでも、働くしか道はなかったが……。
「実は子供が呼吸系の病気も患っていて、生後3か月経ちましたが保育園に預けることはできないんです。だから働けず、呼吸が止まらぬよう、部屋でずっと見守っている状態が続いています。こんな状態なので、出産前から飼っていた犬も手放しました」
まさに息もできないほど八方塞がりな日々。6畳間を埋める大きなベビーベッドで寝転がる我が子を、四六時中見つめ続けている生活が続いているという。
「毎日日光浴として30分ぐらいは散歩に出掛けますが、基本的に家でずっと引きこもっています。食材を買う余裕もないので、安くて高カロリーで手軽に食べれる『チョコパイ』がここ最近の主食なんです。笑っちゃいますよね」
頼みの綱の貯金もそろそろ底を尽きようとしている。この親子に救いの手を差し伸べようとする者は、現時点では皆無だ。
12/22発売の週刊SPA!に掲載されている特集『[ニッポンの最貧困]密着ルポ』では、上記のような“最貧困に喘ぐ人々”の過酷すぎる日常に密着。漂流青年、貧困女子、下流老人、困窮中年ら世代別に貧困問題を取り上げている。寒波吹きすさぶこの季節、どん底生活を送りながら彼らは今、何を思うのか。明日は我が身な「貧困問題」を、ぜひともご一読あれ。 <取材・文・撮影/週刊SPA!編集部>
乳児を抱えての困窮生活。親も役所も頼れない……
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