Webメディアの黒船「BuzzFeed」は日本でどう戦うのか? 古田編集長を直撃
全世界から月間2億人が訪れる米国発メディア「BuzzFeed(バズフィード)」が日本に上陸した。 “Webメディアの黒船”は、日本のメディアをどう見たのか?
バズフィードの特徴のひとつに、インターネット上の情報を収集しまとめた「キュレーション」記事がある。日本では先発のキュレーションメディアが「手抜き取材」や「パクリ」などと批判されたが、日本版編集長の古田大輔氏はそうした見方に異を唱える。
「確かに、『取材をしていない』という声も聞きますが、僕はそれは違うと思っています。取材って、人の声を集めて記事を書くことですよね。今はツイッターやインスタグラムをうまく検索すれば、面白い人々の声や写真がネット上にあって、エンベッド(※ツイートの埋め込み)で法的に問題なく集められるわけです。それをやらない手はないと思っています。
ニューヨーク本社に所属する女性記者は、取材のほとんどをフェイスブック(以下FB)でやっています。そこで面白い社会問題を見つけ、関係者に連絡を取り、メッセージを交換して記事を書く。彼女にその取材手法について聞いたところ、『今、アメリカ人の大半はFBに住んでいます。FBで会えて、コミュニケーションが取れて、裏も取れる。それで書くのと、会って書くのと何が違うの?』と言われ、なるほどなと思いました。実は現場に行かず見つかることも今の世の中にはあって、インターネット上の声を誠実な態度で聞くことが、バズフィードの力のひとつだと思います」
また、日本ではキュレーションと称して、著作権を無視した画像転載などしていたメディアが批判されたことがある。同じようにキュレーションを行うバズフィードはどう対応するのか?
「バズフィードには写真の選別や手配を行う専門の『フォトエディター』がいます。彼らが写真の著作権を取りまとめてもいます。バズフィードの世界ルールを踏襲しつつ、日本の著作権法に合ったものを複数の法律事務所に相談した上で、明確なルールを定めています。すでに『フォトエージェンシー』とも契約しておりますし、SNS上の写真は先述した通りエンベッドであれば著作権もクリアできるので問題ないと考えています」
キュレーション記事が有名なバズフィードだが、ジャーナリズムでも評価を高めつつある。最近では、過去の膨大なデータを解析してテニスの八百長疑惑を実証した記事が話題になったが、その驚異の調査報道力を支えるのは、グローバルなスペシャリスト集団だ。
「ニューヨークには調査報道チームがあって、’00年にピュリツァー賞を受けたジャーナリストのMark Schoofsがチームを率いています。今回の記事は、エンジニアリングとデータ分析ができて、かつジャーナリズム教育も受けている彼らが書いたものですね。単純なデータ収集や分析だけではなく『ジャーナリズムの観点から、これをどう生かせるのか』ということまで考えています」
日本のウェブ媒体の多くは、広告が表示された回数に応じて収入を得る「バナー広告」を採用しており、ページ分割などでいかに読者にクリックさせるかということに躍起になっている。バズフィードは、自身のサイト上のコンテンツと同じ形式で広告を掲載する「ネイティブアド」方式を採用しているため、バナー広告はなく、記事のページも分割されていない。
「僕はインターネットが大好きですが、ただひとつ苦手なのがクリックすることです。ページ分割があることで、クリックで押し間違えるのがストレスに感じるんですね。例えば、8000字ある記事でもページを分割せずスクロールだけで読めるのは、電車内でも立ちながらゆっくり読めるし、むしろ通勤時間が長い日本には合うんじゃないかと考えています。
将来的には日本でも、もし何か大きなニュースが発生したときに『バズフィードを見てみよう』『バズフィードなら何か知らない情報があるんじゃないか』と思ってもらえる存在になりたいですね」
【古田大輔】
’02年、朝日新聞社に入社。社会部などを経て、バンコク特派員、シンガポール支局長に。’13年には「朝日新聞デジタル」編集者となり、エンジニアとのハッカソンやデータジャーナリズムなどを担当。昨年10月から現職
★創刊から10年「バズフィード」が歩んできた道
’06年、ジョナ・ペレッティがニューヨークで設立。「ネットで拡散するコンテンツ」を追求するグローバルメディアで、政治経済のニュースからエンタメ、動画まで幅広く提供する。ソーシャルでは圧倒的な拡散力を誇り、全世界のユーザー数は月間2億人以上、ビデオ視聴は月間15億回、FBなどのプラットフォームで閲覧され、月間50億ビューのメディアに成長。’14年にはベンチャーキャピタルのAndreessen Horowitzから5000万ドルの資金調達に成功した。過去には、米オバマ大統領や英キャメロン首相の単独インタビュー実績も。今年1月19日に海外版としては11番目の日本版を公開し、創刊編集長には朝日新聞出身の古田大輔氏が就任した。
<取材・文/北村篤裕 撮影/我妻慶一>
エンタメからジャーナリズムまで網羅「バズフィード」の手法
世界中のスペシャリスト集団とリソースを活用

【関連キーワードから記事を探す】
元セクシー女優が明かした“アンチとの衝撃トラブル”「PTSDと診断されて、閉鎖病棟に3ヶ月入院することに」
「興味ない」は大人の厨二病。ネット上でもスナックでも嫌われる“酸っぱい葡萄な男”たち
V系バンドマンの“黒歴史”、変貌ぶりがSNSで話題に「本当は出したくない写真だったんです(笑)」
外国人観光客にも大人気「新宿東口の猫」の“稼ぎは億単位”だった…そのワケを担当者に聞く
“マスク詐欺”で話題のYouTuberが、14歳で動画投稿を始めて200万フォロワーを超えるまで「昔から人間観察をよくしていて」
「楽天の息の根を止める」意外な企業の正体。“楽天経済圏”を崩壊させる周到な戦略
12か月分無料キャンペーン中「Yahoo!プレミアム」の特典対象者と本当のお得度
ヤフーが社員の副業を認める理由「優秀な人材こそ一社に縛らない」
前澤氏はZOZOの経営に失敗したのか?見落とされる3つの誤解
ZOZO前社長・前澤氏への、過剰な批判も擁護も寒々しい理由/鈴木涼美
夜職を辞めた女性たち3人が歩む“その後の人生”。「パパ活女子に逆戻り」してしまうケースも
野島樺乃、3度目のデビュー「誰にも繕わない素直な自分を届けたい」
「300円が7万円に」パチンコの“ビギナーズラック”で人生が狂った50歳男性。18歳で“爆勝ち”を経験してしまった男の末路
大ヒットした『RRR』主演俳優が語る、インド映画躍進のワケ「日本のファンの愛情もすごいよね」
ヒカル×入江巨之「視聴者ファースト」で上場を諦めた真相。“1週間に10億円”売り上げる男が語る革新的経営
ムカつく「ビジネス横文字」の使い方
グロス、セグメントってどういう意味? 業界によって使い方も違う!? 【ビジネス横文字調査】
知らなきゃ恥ずかしい「ビジネス横文字」 リソース、ドラスティック…正しく理解してる?
Webジャーナリズムの日本での可能性と紙媒体の未来――BuzzFeed統括編集長が語る
Webメディアの黒船「BuzzFeed」は日本でどう戦うのか? 古田編集長を直撃
年収1000万円アナ・奥井奈々「仕事はXのポストを読むだけ」から、腐らずに周囲の信頼を勝ち得た秘訣
令和の虎・林社長「武田塾」の経営ノウハウを活かし、2年で6億円を稼いだ秘密とは?
スマスロ新台「賞金首Angel」がアツい!継続率約80%「ゴールドバトル」が爆発のトリガーに
平凡なサラリーマンが「10か月で月収850万円」に。水島翔式FXトレード術とは
月収50万円のサラリーマンが“月2000万円稼ぐ”までにやった「たった2つのこと」