日本より深刻な「中国の薬物汚染」。常習者は1800万人、罰則の軽さが一因か?
清原和博容疑者の逮捕をきっかけに、薬物汚染の実態に注目が集まっている。警察庁の統計によると、’14年の薬物事犯検挙人員は1万3121人。人口10万人あたりの検挙人数は約10人という計算になる。
しかし、これを遥かに凌ぐのが、中国の薬物汚染だ。当局が発表した統計によると、’15年に検挙された人数は前年比20%増となる約106.2万人。人口10万人あたり約78人が薬物を乱用していることになるのだ。
中華人民毒報】
行くのはコワいけど覗き見したい――驚愕情報を現地から即出し1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売
深センの不動産会社勤務・岡本宏大さん(仮名・29歳)は、薬物汚染ぶりについてこう話す。
「深夜のカラオケボックスでは、酒とは明らかに違う酩酊状態の連中をよく見かける。だいたい若い女が一緒なんですが、彼女たちは酒ではなく、一緒にドラッグをやるための出張ホステスで、『氷妹』(氷は覚せい剤の意)と呼ばれている。追加料金を払えばセックスもさせてくれるようです」
日本と同様、安価で手軽な危険ドラッグも蔓延している。上海市在住の留学生・鳥井慶太郎さん(仮名・28歳)の話。
「『開心水(ハッピーウオーター)』という液体が、ハイになれると学生の間ではやっていました。4000円くらいで売られているミニボトルに入った液体で、直接飲んだり、カクテルに混ぜたりして飲むんです。堂々と売られていたんですが、昨年末頃から取り締まり対象になり、一気に姿を消した。成分は脱法ドラッグを装った完全に違法なものだったようです」
中国で広がる薬物汚染の一因として、「罰則の軽さ」を挙げるのは、中国事情に詳しいジャーナリストの富坂聰氏だ。
「中国では、薬物の密売には死刑を含む厳しい刑罰が科されますが、乱用者に対する罰則は意外なほど軽微です。所持量や薬物の種類にもよりますが、刑事罰としては2週間の拘留のみという場合が多い。依存者は本来、『戒毒所』と呼ばれる更生施設に収容されることになってますが、全国的に定員オーバーなので、最近ではそのまま釈放ということも多いようです」
『新京報』(2月18日付)などによると、麻薬患者更生施設に登録されている依存症患者は現在、234万人以上おり、中国国内には1800万人の麻薬常習者がいるという。日本同様、脱法ドラッグの蔓延で、若者の常習者も急増しており、18歳未満の依存者が4.3万人もいるというから驚きだ。
一方、中国の薬物蔓延は、日本にとっても対岸の火事ではない。2月に覚せい剤100kgを所持していたとして逮捕された暴力団関係者5人は、洋上で取引していたことがわかっている。一部の容疑者は事件直前に中国へ渡航しており、この覚せい剤は中国経由で密輸されたと当局は見ている。
日中間の薬物の洋上取引に、最新ガジェットが投入される可能性を指摘するのは、中国在住フリーライターの吉井透氏だ。
「東シナ海洋上での薬物取引にレーダーで検知されにくいドローンがすでに投入されているという情報がある。アメリカとメキシコ国境で同様の麻薬密輸事例があり、それをマネたのでしょう。今後、今まで以上に薬物が日本へ流入するおそれがあります」
国境を超えた薬物氾濫に対し、日中間の連携が必要となりそうだ。 <取材・文/奥窪優木>
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