トランプが政治プロパガンダに取り入れた「プロレス的手法」
もうひとつの大きな共通点は、メディアをフルに活用し、テレビの画面のなか――リアリティーとファンタジーの境界線があいまいな領域――で暴言を吐きつづけることで大衆の支持を集めたという点だ。ビンスのプロモーターとしてのモットーは“人びとが求めるものを人びとに与えるGive people what they want”で、トランプはどうやら、このあたりのプロレス的な手法を政治プロパガンダにアダプトしている。
トランプ自身もNBCのリアリティー番組“アプレンティス(見習い、実習生、初心者)”に主演し、億万長者の生活をテレビ的なエンターテインメントに仕立てあげることで一般的な知名度を獲得した。だから、大統領選におけるキャンペーン展開は、リアリティー番組のコンテンツの延長といっていい。
リアリティー番組の延長としての確信犯的な暴言、罵詈雑言、ゆがんだ言論の自由だから、いくら良識派のマスメディアにたたかれて痛くもかゆくもないし、トランプにとってはそのほうがかえって都合がいい。
トランプがターゲットとしている有権者は、日本でいうところの無党派層、アメリカではインディペンデント・ボーター(独立票)といわれる中間層で、それはひじょうに広い層のTVビューワー(一般視聴者層)をカバーしている。
プロレスのリングでは、どんなに悪くてしぶといヒール=悪役でも、やっぱり最後の最後にはベビーフェース=正義の味方にやっつけられるパターンのほうがオーディエンス=観る側はすっきりする。そうだとすると、いまのところ大暴走をつづけている大ヒールのトランプは、やっぱり最後は大惨敗するほうが“人びとが求めるものを人びとに与える”になるのではないだろうか――?
文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
※「フミ斎藤のプロレス講座」第66回
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斎藤文彦
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