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作家・樋口毅宏が思う「図書館問題」――お金を払って読んでくれた人こそ読者です

 もちろん私も、図書館で新刊の貸し出しをやめれば、出版不況に歯止めが掛かるなどと思うほど能天気な人間ではありません。ブックオフなど中古販売チェーン店の存在や、出版業界を取次が支配している問題もあるでしょう。図書館流通センターが買い上げてくれているから、生活ができる作家がいるのも事実です。それでも私は図書館に対して、「最新刊を半年は貸し借りを控えて下さい」と言わずにいられなかった。  これは私がいま小説家という職業に就いているから言っているのではありません。マンガ、映画、音楽など、作り手に対しての感謝は、お金を払う行為がいちばんダイレクトで、わかりやすく、そして堅実な方法なのです。  あと私が言っておきたいのは、なぜ諸先輩方はこれまでこの件に関して声をあげてこなかったのかということです。私より作家歴が長く、知名度もある方はいくらでもいるのに、なぜデビューして三年の私が矢面に立たなければならなかったのか(この図書館問題を提議したときはデビューまだ一年半でした)。図書館に対して長年忸怩たる思いを持っていたはずなのに、世間に叩かれることを恐れてダンマリを決め込み、あなたたちは何をやってきたのですかと。  驚いたのはある年配の作家で、綺麗事を言う方がいたことでした。そうやって大人の態度を取ったつもりなのでしょうか。学校にもいましたよね。ひとりが憎まれ役を買って出て波風の立つ異議申し立てをすると、いかにも「僕のほうが大人です」と、いい子ちゃんの意見を言う人が。そういう方にお聞きしますが、それではあなたは、「お金を払って読んで面白かったと言う人」と、「お金を払ってないけど面白かったと言う人」のどちらを有り難いと思いますか? 「両方です」と言ったら、私はこう答えます。 「ウソをつくな。第一、タダで読んだ人と、身銭を切って買ってくれた人を同じ扱いにすることが失礼だ。何年も給料が上がっていないのに、決して安いとは言えない本にお金を払ってくれた人を、いったい何だと思っているのか」  私にとって、お金を払って読んでくれた人こそ読者です。  読者よ、ありがとう。あなたたちのおかげで僕は生活ができています。これから読者になってくれる皆さん、どうぞよろしくお願い致します。

樋口毅宏の“愛”溢れるコラム集『さよなら小沢健二』(扶桑社)は好評発売中!

樋口毅宏●‘71年、東京都生まれ。’09年に『さらば雑司ヶ谷』で作家デビュー。新刊『ドルフィン・ソングを救え!』(マガジンハウス)、サブカルコラム集『さよなら小沢健二』(扶桑社)が発売中。そのほか著書に『日本のセックス』『二十五の瞳』『愛される資格』など話題作多数。なかでも『タモリ論』は大ヒットに。
―[樋口毅宏]―
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