エロく激しくいやらしいJCが理想とする先生像とは?
無難な装いの青山先生の特徴を今から思えば、とにかく生徒と同じ目線で楽しもうとしてくる。おそらく裏で涙ぐましく流行語などを勉強し、生徒がおしゃべりしていれば、ちょべりぐなテンションで混ざってくるし、生徒のお祭り行事は生徒の一員となって仲間意識ばしばし出してくる。厳しすぎる先生の悪口を授業で言って生徒の共感を得たりする。高山先生の踊ったSHAKEでも共演、生徒にタメ口を許し、年頃の生徒には自分の恋愛話なんてぶっちゃけちゃったりする。そう!まるで人気者!
しかし、まるで人気者みたいであっても、人気者なんて言うのは自然になるものであって自ら努力するとその姿はちょっと痛々しい。なんか、金八見過ぎっていうか、鬼塚意識し過ぎっていうか、学校まで続く川べりの土手で周りに生徒がわーと寄ってくるあの光景を夢見て教師になった感が溢れてるっていうか。で、結果授業がそれなりに面白かったり話しやすかったりしても、その彼の理想のカラクリが見えてしまうとこちらは興ざめし、男として高貴な妄想の対象になったりはしない。
対する峯岸先生が、怖がられたり授業を面倒臭がられたりしながらも妄想トークに頻繁に登場し、密かに憧れる生徒の視線を集めていたのは、怖さが吊り橋効果で恋心を刺激するとか、そもそも女って結構冷たい男にハマるとか、シンプルな理由もあるにせよ、こちらの気持ちをつかもうと意識していない距離感が清々しかったのだろうと思う。女にどう思われるか、で行動している男って結局モテない。
それにだな。女だって男並みにシチュエーション萌えしてるわけであります。先生と生徒。そうじゃなかったらどこの最高値の華の女子中高生がくたびれた40歳に興味を示しますか。シチュエーション萌えは「それらしく」あればあるほど萌える。「生徒と同じ目線で……」なんて冗談じゃないわけで、そこは先生なら先生らしく白衣に竹刀持ってビシバシ怒ってほしいところ。これは制服を脱ぎ捨ててつまらない社会人になってからだって、そうだ。「人気者っぽい」上司が必ずしも女子のエロ妄想に登場せず、ぶっきらぼうで上から指示ばっかりしてくるような上司が妄想の中では大忙しであるカラクリはそのへんにある。
身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論」(幻冬舎)発売中。現在は日経新聞を退社し、執筆業を中心に活動。幻冬舎plusにて「愛と子宮が混乱中 夜のオネエサンの母娘論」を連載中。LINEブログは http://lineblog.me/suzukisuzumi/
(撮影/福本邦洋 イラスト/ただりえこ)’83年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。専攻は社会学。キャバクラ勤務、AV出演、日本経済新聞社記者などを経て文筆業へ。恋愛やセックスにまつわるエッセイから時事批評まで幅広く執筆。著書に『「AV女優」の社会学』(青土社)、『おじさんメモリアル』(扶桑社)など。最新刊『可愛くってずるくっていじわるな妹になりたい』(発行・東京ニュース通信社、発売・講談社)が発売中
【鈴木涼美(すずき・すずみ)】
83年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。09年、東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。専攻は社会学。「
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