エロく激しくいやらしいJCが理想とする先生像とは?
―[鈴木涼美のおじさんメモリアル]―
『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは自らを饒舌に語るのか』(青土社)、『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』(幻冬舎)などの著作で「性を商品化する」女性たちの内面を活写し注目されている文筆家の鈴木涼美が、「おじさん」をテーマに日刊SPA!で連載する「おじさんメモリアル」第17回!
【第17回 先生、先生、そこは先生♪】
西野カナさん×マネージャーさんの熱愛報道をワイドショーで見て、ああタレント×マネージャーさんていうのもアリね……とニマニマしている妄想女子の涼美です。実際に付き合うかどうかはともかく、仕事上身近な人とのラブロマンスは想像すると楽しい。キャバクラ時代は店長、AV時代はマネージャー、大学院時代は指導教官、新聞記者時代はキャップかデスク。もしこの人と付き合ってたら、とか、セックスしたらと考えながら仕事すると、くだらない仕事、ハードな仕事でもやる気がわく。私の場合、妄想しすぎてついついその人とのセックスの夢を見たり、夢を見たせいで別に特にまだ何も起こってないのに職場で目があって赤面したりと、わりと重症なタイプです。
私ほど重症かどうかはともかく、未だ恋愛関係ではないけれどかなり密な関係の異性とのアレやソレを想像し、恋愛対象として吟味する、というのは世を生きる人間の常だと思う。で、それの原点というのは決まって先生×生徒である。実際に先生に恋する女子もいれば、本当に先生と結婚した人もいますが、そっちはどちらかというと稀で、基本的にはもっぱら、「立山先生と柳瀬先生、ヤルならどっち?」とネタにしたり、セックスしたら内申書ごまかしてくれるだろうかと妄想したり、「柿本先生って旦那にしたいタイプだよね」なんて共感を集めたりするだけである。
そもそも耳年増な中学生くらいの女子なんて学校訓の「清く正しく美しく」を「エロく激しくいやらしく」に書き換えて、学生鞄には性欲と好奇心と男性嫌悪など複雑に色々詰め込んで学校生活をやり過ごすので、私も散々そんなおしゃべりをして育ちました。脳内エロの対象にした先生は小学校から大学院までざっと五十人くらいはいるでしょう。
特に女子中高などでは、先生×先生でやおいマンガ描いているクラスメイトまでいて、先生の脳内生け贄度は限りなく高い。私もまた、中学時代は鎌倉の片田舎にある清く正しく美しい女子校に通っており、クラスメイトとかなりえぐい話をしながら、先生に興奮したり先生を嫌悪したりと忙しく過ごしていた(ちなみに私は清さ正しさから過度に逸脱していたため、小中高一貫のはずの同校を中学で卒業し、校風ゆるゆる性欲だだもれの都内の共学高校に進学したので、女子校の思い出は中学のみです。小学校はクラスの四分の一だけ男子生徒がいました)。
’83年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。専攻は社会学。キャバクラ勤務、AV出演、日本経済新聞社記者などを経て文筆業へ。恋愛やセックスにまつわるエッセイから時事批評まで幅広く執筆。著書に『「AV女優」の社会学』(青土社)、『おじさんメモリアル』(扶桑社)など。最新刊『可愛くってずるくっていじわるな妹になりたい』(発行・東京ニュース通信社、発売・講談社)が発売中
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