風俗嬢のおっぱいを背中に感じながら私はギブアップした――爪切男のタクシー×ハンター【第二十二話】
そんな親父の人生を思って、なんとなくやるせない気持ちになった私は風俗に行くことにした。
渋谷に新しく出来た、スポーツ経験者ばかりを集めたアスリート系風俗店に足を運ぶ。陸上、水泳、空手、剣道、バスケなど、プロフィール写真に経験したスポーツ歴が記載されているカタログにじっくりと目を通す。いた。アマレス経験者がいた。迷わずその子を指名する。待ち合わせのホテルに姿を見せたのは、笑顔が素敵な、マキバオーによく似た女の子。筋肉質な身体をしているが、絞る所は絞ってあるスリムな体系の女の子。階級で言えば48Kg級といったところか。
「オプションでアマレスのユニフォームに着替えますけど……」
「よろしくお願いします」
「じゃあ、お風呂で着替えてきますね!」
「よろしくお願いします」
何度も言うが、親父には本当に感謝をしている。あの時死なないでくれて本当にありがとう。私を強く育ててくれて本当にありがとう。変な女と再婚しないで一人でいてくれて本当にありがとう。警察に捕まったり色々笑わせてくれて本当にありがとう。どうしても素直になれなくて本当にごめんなさい。アマレス馬鹿だった親父のことだから、きっと俺とアマレスごっこをしたかったよね。一度もしてあげられなくてごめんなさい。ずっと嫌いだ嫌いだと言ってたけど、俺はアマレスのこと本当は嫌いじゃないよ。
「ジャ~ン!!!」
そう言って、シャワールームから出て来た風俗嬢に私は渾身のアマレスタックルを仕掛けた。親父にぶちかましてあげられなかった低空タックル。親父直伝のタックルは私にちゃんと受け継がれているのだ。親父のタックルは世界に通用することを私が証明してみせる。色々な気持ちをごちゃまぜに詰め込んで私は風俗嬢に突撃した。
「しゅっっ」
彼女は私のタックルを華麗にかわして、全体重をかけて私を上から押しつぶした。体重のかけ方がこれまた絶妙で、彼女のおよそ二倍の体重があるはずの私はうつ伏せにされたままピクリとも動けなかった。
「参りましたか?」
「……」
「参った?」
「……参りました」
背中に感じる風俗嬢のおっぱいの感触を感じて軽く勃起しながら、私はギブアップした。良いギブアップだった。
『死にたい夜にかぎって』 もの悲しくもユーモア溢れる文体で実体験を綴る“野良の偉才”、己の辱を晒してついにデビュー! |
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