「踊らない美人より踊るブスの方がいい女」私は彼女と踊り続けた――爪切男のタクシー×ハンター【第二十一話】
―[爪切男の『死にたい夜にかぎって』]―
終電がとうにない深夜の街で、サラリーマン・爪切男は日々タクシーをハントしていた。渋谷から自宅までの乗車時間はおよそ30分――さまざまなタクシー運転手との出会いと別れを繰り返し、密室での刹那のやりとりから学んだことを綴っていきます。
【第二十一話】「踊らない美人より踊るブスの方がいい女」
渋谷で働いていた頃のこと。同棲中の彼女に首を絞められて起こされるというハードコアな生活も数か月が経過していた。
躁鬱と不眠症に悩まされていた彼女が一念発起してはじめた断薬生活。順調なスタートを切ったかに見えたのも束の間、断薬からくる禁断症状で精神の安定を失った彼女は、スヤスヤと寝ている私の首を、明らかに殺意を込めて絞めてくるようになった。私としては、ただ首を絞められるだけの日々を過ごすのはつまらないので、首を絞められた回数をポイントカードのように記録し、一定数溜まったら「豪華なディナーを食べに行く」、「温泉旅行に行く」などの二人で楽しめる特典を多数設けて、お互いを励まし合って頑張っていた。
以上のようなポイントカード形式に加え、私も日々ブリッジによる首の鍛錬を続けたことで、幸いにも絞殺されることなく断薬生活は順調に続いていた。温泉旅行には一回行くこととなったが、宿泊した旅館にて浴衣姿の彼女に首を絞められるという朝を迎えた。浴衣姿の艶やかな女に首を絞められるのは、普段よりも風情を感じられて非常に良かった。どうせ首を絞めるなら素敵な服装でお願いします。
そんな断薬生活中のある日、彼女が真剣な顔で相談してきた。
「私ね、ダイエットしようと思うの」
「……別に痩せなくてもいいのに」
「いつもそうやって言ってくれるのに甘えてたもん……今まで『痩せろ』って一回も言わないでくれてありがとう」
「う~ん……今がちょうどいいと思うけどなぁ」
「薬の副作用で太りやすい体質になってたから……薬を飲んでない今のうちに痩せたい! 痩せたい! 痩せたい!」
「それなら応援するけど……どんなダイエットするの? 食べる量減らす? ジョギングでもする?」
「私、食べるの好きだから量は減らせない、走ったりするのも嫌」
「そうだよね」
「だから……私……踊る!」
一瞬、断薬の禁断症状が出ているのかと心配したが、その日から彼女は本当に踊り始めた。お気に入りの激しいダンスミュージックを大音量でかけては、荻野目洋子が「ダンシング・ヒーロー」の歌い出しで踊っていたサイドステップ、または井森美幸がスカウトキャラバンで見せた奇怪なダンスに似た動きをひたすら繰り返していた。個性的過ぎる踊りに吹き出しそうになったが必死で我慢した。彼女は今、汗をかいている。初めて出会った時、新宿の唾マニア達に自分の唾を売って生活をしていた彼女が汗をかいている。素晴らしいことじゃないか。もう唾を出す必要はない。唾を出すより汗を出せ。
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『死にたい夜にかぎって』 もの悲しくもユーモア溢れる文体で実体験を綴る“野良の偉才”、己の辱を晒してついにデビュー!
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