東京タピオカランドに35歳オッサンがぼっちで行ってみた。剛毛すぎてインスタ映えが…
一気に訪れるブームというものは、その広がりの最高点をY軸として線対称に過ぎ去っていく。今その只中にあるのがタピオカではないだろうか。
そんなタピオカを私は食べたことがない。学生時代からクラスの一軍に所属することはなく、仏像と落語と相撲を好んで育った私は、あんなにキラキラとした物を前にしたら、死んでしまうかもしれないと半ば本気で思っている。
しかし今回は、ずっと二軍暮らしでその趣味から史上最年少老人を自称する35歳のオッサンが、タピオカブームの象徴とも言える「東京タピオカランド」に飛び込んでみた。
原宿駅を降りると、痛いほどの夏の陽光が照りつける中、すでに何人もの若者がタピオカ片手に往来している。タピオカランドは、駅から交差点を渡ってすぐの「jing」という敷地で開催されている。初日には1500人が訪れ入場規制もかかったというので、30分ほどの行列は覚悟していたのだが、たどり着いてみると臨時休業かと思うほどに誰もいない。
トイレがないのに再入場も不可(現在は再入場可能で入口脇のトイレを利用可能)ということや、ランドの展示が文化祭レベルのショボさということがSNSを中心に広まったことで、客足が遠のいたのだろうか。
受付に進むと、私の前に20歳くらいのカップルが1組と私の後ろに10代らしき女性3人組が並んだ。後ろの女性たちが、キラキラした声で何かを話しては手を叩き笑い合っている。
その時、私の心に一点のシミのようなものが付いた気がした。中学に入った頃、いじめられているとまでは言わないが小馬鹿にされている時期があり、その時に付いたのと同じシミだ。「全ての笑い声が自分をバカにしている」という変な自意識。キラキラ空間にオッサンが入ることで、あの時の気持ちが蘇ったのだった。
受付で、ウエルカムドリンクと交換できるというチケットを渡され「これからタピオカドリンクを飲むのに、飲み物の前に飲み物を飲むってどういう事だ」と思いつつ入園。
各所に散りばめられたカラフルなデコレーションの中、若いスタッフに「いらっしゃいませ」と声をかけられる。彼女はきっと「なんでこんなオッサンが一人で来てんだよ。お前のくる場所じゃねーから」と思ってるんだろうな。この心のシミにも覚えがある。ちょっとラグジュアリーなデパートの、一階の化粧品売り場を通り過ぎる時に、そこにいる美容部員の視線を受けて感じる気持ちと同じだ。
ウエルカムドリンクは4種類のうちから1つ選べるようになっていて、私はバタフライピー+ゆずというドリンクを選んだ。人生初のタピオカだ。
しかし、タピオカはたった2粒しか入っていない。これを人生初のタピオカにカウントしていいのか?A●を見た本数を経験人数に入れてる奴みたいにならないか?とはいえ、呑んでみると爽やかで美味しく、タピオカの独特の弾力も味わう事が出来た。
そうこうしながら、客層をよく見ると半分以上が親子連れであることに気がついた。中には私くらいの汚さのオッサンも混じっている。歪んだ自意識が氷解していくのがわかった。よく考えてみれば入場料1000円(当日券は1200円)に加えタピオカドリンク代600~800円で、合計2000円近くになるのは若い子にとっては大きな出費だ。さらに、ランド内に設えられたキラキラな意匠やブランコ、ボールプールなどは小さな子どもの格好の遊び場になるので、そうなると親子連れが多いのも頷ける。
そんな事を考えながらウロついてみるが、噂通りの小規模だ。ランドというよりルームと言った程度。そして、無骨に剥き出した天井や配線から、文化祭レベルと揶揄される隙が大いに見て取れる。
とはいえ、SNSに投稿するのが目的であれば、その辺りは写らないようにすれば全く問題はないように思える。
ところが、1番奥にある一角だけはなぜか「激辛推し」。私なんかよりずっと、この場にふさわしくないではないか。協賛企業とのオトナの関係でこうなってしまったのだろうか。
このゾーンのあまりの異物感に、危うく忘れそうになっていたが、タピオカドリンクを飲まなくてはいけない。
入っているお店は4店舗、多くの入場者を見込んでいたためか、各店舗に3~4人ほどのスタッフが居るが、おしなべて暇を持て余している。私はLABLAPというお店で、いちごミルク(レギュラーサイズ600円)を注文した。
去る8月13日、夏休みの若者でごった返す原宿の駅前に「東京タピオカランド」が誕生した(9月16日までの期間限定)。私はここがタピオカブームの最高点なのではないかとにらんでいる。#東京タピオカランド は会場で当日チケットを販売しております
— 東京タピオカランド (@tapioca_land) 2019年8月21日
入場待機場所も館内ですので涼んでお待ちいただけます
東京メトロ「明治神宮前駅」直結
JR「原宿駅」徒歩2分#タピラー の皆さまのご来場をお待ちしております pic.twitter.com/jsNy5FCi1a
35歳の万年二軍オッサン、タピオカランドに行く
タピオカ2粒しか入ってねぇ…
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Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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