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「天真爛漫な南仏美人と清楚な日本美人、どちらを選べばいいのか?」――46歳のバツイチおじさんはヨガの総本山で煩悩にまみれた〈第38話〉

朝8時、初めてのヨガレッスンが始まった。 コースは二つあり、初心者用の基礎クラスと上級者用のインターメディアクラス。 まだヨガ初心者の俺は迷わず基礎クラスを受けた。 当然そこにヨガ上級者のるりちゃんの姿はない。 湖で一緒に泳いだサワの姿もなかった。

朝ヨガの基礎クラス。この後、もう少し人数が増えた

基礎クラスに行くと20人くらいの生徒が床に両手を広げて寝そべっていた。これはシャバアサナと呼ばれるポーズで、体だけでなく心の底からリラックスすることが目的である。急いでヨガマットを引き、俺も寝そべって天井を見上げた。前日からの緊張がほぐれたせいか、深く呼吸しているとスーと眠りに落ちてしまった。しばらくすると、ゆっくりと落ち着いた先生の声が聞こえ、ふと目が覚めた。 先生「これからヨガプログラムを始めます。今日、初めての方は誰ですか?」 手を挙げると俺の他に3人の白人女性が手を挙げた。 先生「午前中は柔をメインとしたプログラムになります。それから太陽礼拝と呼ばれる10個のポーズを説明しながら丁寧にゆっくりとやっていきます。みなさんは一つ一つの動きを正確に確認しながらやっていってください」

シヴァナンダ・ヨガの10個の基本ポーズである太陽礼拝 

朝のヨガトレーニングが始まった。ヴァラカルビーチのアンジュ先生のもとで2週間受けたシヴァナンダ・ヨガよりも、繊細に正確にポーズをすることを求められた。ポーズが少しでも違うとサブの先生がやってきて、丁寧にポーズや息の仕方を教えてくれる。2時間のレッスンが終わるとTシャツがびしょびしょに濡れていた。 男子寮に戻ると急いでシャワーを浴び、Tシャツとパンツを洗い、外にある洗濯縄に干した。Tシャツと短パンを3枚しか持ってきてないため、一回のヨガが終わるとすぐに干さなければならない。1日のレッスンは3回。朝の洗濯モノが明朝には乾いていて、なんとか3枚体制で回っていくという計算だ。洗濯が終わると、10時30分になっていて急いでブランチに行かなければならなかった。

男子合宿所の裏にある洗濯干し場

食堂のヨガのレッスン場に行くと長細いゴザが2列引かれていて、そこに50人ぐらいの生徒が正座やあぐらの体制で座っていた。50人近い白人女性が椅子ではなく床に直座りしてる姿が、どこかもの珍しく面白く感じた。

ブランチは食堂・ヨガのレッスン場にゴザを引いて全員一緒に食べる

俺は白人の群れの中に一人でポツンといるはずの日本人女性を探した。 「るりちゃん、どこかな?」 遠くのほうに、背筋を伸ばして美しい姿勢で座っているるりちゃんを見つけた。だが、彼女はゴザの中央部分に座っていて、両隣にはすでに他の人が陣取っている。これから隣に行くのはとても無理だ。俺自身もどこにどうやって座っていいのやらわからず、キョロキョロとしていた。すると… サワ「ゴトー、ご飯初めて?」 またもや南フランスの美女サワが話しかけてきた。 俺「うん。すごいねー、運動部の合宿みたい」 サワ「ゴトー、座ろう。食事を配り始めてるよ」 俺はサワの隣に座った。なんか、いい雰囲気だ。

南フランスの陽気なサワ。とてもフレンドリーな性格

その後、カレーライスがバケツで運ばれてきた。ここでの食事は全てベジタブル。南インドの野菜は強い太陽を浴びてるため、他の地域に比べておいしくパワーもつくという。一口食べただけで、めちゃくちゃおいしいのがわかった。

アシュラムのベジタブルカレー。ヘルシーなうえにすげ~おいしい!

俺「サワ、すげ~うまいね!」 サワ「ゴトー、シー!」 そうだ! 食事中もおしゃべりは一切禁止。 周りを見渡すと、目をつぶり、五感を研ぎ澄ませて味をかみしめてる人もいた。 もちろんスプーンもフォークもない。 俺は覚えたてのインド式「右手で食べるメソッド」を使いカレーを平らげた。サワもるりちゃんも上手に右手を使いカレーを食べていた。 「るりちゃんもサワもやっぱり本格的なヨギーニだな。ばっちりインドに順応してる」 俺は改めて感心した。

インドの基本、右手でご飯を食べる。ここでかなりの練習をした

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「ミスターゴトー、ミスターゴトー」
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