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「天真爛漫な南仏美人と清楚な日本美人、どちらを選べばいいのか?」――46歳のバツイチおじさんはヨガの総本山で煩悩にまみれた〈第38話〉

プライベートレッスンが終わるとすぐにヨガ哲学の授業だ。サワは女子寮に戻って少し昼寝をするらしい。レッスンが少し長引きシャワーを浴びる時間もないので、俺はその足で授業に向かった。 すると、るりちゃんが相変わらず綺麗な姿勢で体育座りをし、授業を受けていた。 俺はドキドキしながらるりちゃんの隣に座った。 「授業中、女の子の隣に座ってドキドキするなんて、高校以来だな」 るりちゃんは俺を見てニコリと笑うと、すぐに前を見て真剣な表情で授業に集中した。真剣な横顔もまたキュートだ。

ヨガ哲学の授業。先生は毎日変わる

ヨガ哲学の基本的な考え方

今日の授業のテーマはヒンドゥー教。先生は70歳近いグルと呼ばれる導師でボロボロの宗教服を着ていて、真っ白い髭は40~50センチはある。「この方がインドの山奥で1000年修行した仙人です」と言われても誰も疑わないような独特オーラを漂わせていた。 授業は英語で行われるのだが、かなり癖の強いインド訛りなうえに初めて聞くような内容ばかりで理解するのがかなり難しい。そもそも、1時間半の授業を100%聞き取れるほどの英語力を持ち合わせているはずもなく、始めの5分でちんぷんかんぷんになった。 俺「(小声で)るりちゃん、聞き取れる?」 るりちゃん「いや、かなり訛りも強いし厳しいです」 俺「だよねー」 るりちゃん「でも、かなり勉強になることを教えて下さってますよ」 そう言うとまた真剣な眼差しで授業に集中した。俺は心を入れ直し先生の言葉に耳を傾けた。 すると、昨夜少し話をした60歳くらいのダンディーなイギリス人男性が立ち上がり、席を外そうとした。彼はこのアシュラムにもう3か月はいるらしい。アメリカやイギリスの学校は自由な校風で、授業が面白くないと立ち上がって退出するようなシーンを青春映画で見たことがある。 グル「おい! そこのお前。何を立ち上がってるんだ」 イギリス人「少し部屋に帰って休もうと思って」 グル「ふざけるな!」 グルは張本勲ばりの大きな声で激昂し、喝を入れた。 グル「俺が一生懸命講義してるのに失礼だろ!」 イギリス人「好きなときに休んでも良いって聞いてるけど」 グル「あー、いつでも帰って良いぞ。ただな、立ち上がって席を外すなら、なんか大切なものがあるだろう!」 イギリス人「何ですか? それは?」 グル「挨拶だよ。年上の私の講義を途中退室するなら一言あってもいいだろう。お前には敬意ってものがないのか!」 イギリス人「……はい、では席を外します」 グル「敬意が足りない!!」 イギリス人「すみません。席を外させてもらいます」 グル「よし、良いだろう。行け!」 おーー! グルの感覚、昔の日本人と一緒だ。 イギリス人相手に全く媚びてない。 白人コンプレックスの欠片もない。 なんか…なんか……すげーーかっこいい!! 俺は一瞬で心を奪われた。 そして、いつの間にかこのヒンドゥー教のグルを尊敬するようになっていた。
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夜までヨガ漬け
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1969年大分県生まれ。明治大学卒業後、IVSテレビ制作(株)のADとして日本テレビ「天才たけしの元気が出るテレビ!」の制作に参加。続いて「ザ!鉄腕!DASH!!」(日本テレビ)の立ち上げメンバーとなり、その後フリーのディレクターとして「ザ!世界仰天ニュース」(日本テレビ)「トリビアの泉」(フジテレビ)をチーフディレクターとして制作。2008年に映像制作会社「株式会社イマジネーション」を創設し、「マツケンサンバⅡ」のブレーン、「学べる!ニュースショー!」(テレビ朝日)「政治家と話そう」(Google)など数々の作品を手掛ける。離婚をきっかけにディレクターを休業し、世界一周に挑戦。その様子を「日刊SPA!」にて連載し人気を博した。現在は、映像制作だけでなく、YouTuber、ラジオ出演など、出演者としても多岐に渡り活動中。Youtubuチャンネル「Enjoy on the Earth 〜地球の遊び方〜」運営中
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