ライフ

78歳の現役女性バックパッカー・武子さんが今でも世界を回る原動力とは?

武子さんの旅はまだまだ続く…

 私は武子さんへのインタビューのため、ゲストハウス『Long Luck』を2度訪れている。2度目のインタビュー時、武子さんは宿泊しているある男性を呼び寄せた。  穏やかな雰囲気を醸す吉本さん(66歳)は、インドのブッタガヤで『カフェげんき』という飲食店を運営し、神戸とインドとを行ったり来たりしているという。武子さんは、吉本さんと出会ったきっかけを話してくれた。 「私が2016年から2017年にかけてブッタガヤに滞在しているとき、『カフェげんき』へ来店したのがきっかけです。そこで吉本さんから『うちでアルバイトしてくれないか?』って言われて。78歳でも求人先があるんですよ(笑)」
78歳の現役バックパッカー

取材中、偶然『Long Luck』に宿泊していた吉本さん(66歳)。インドで飲食店を経営しているそうだ

『カフェげんき』は2012年2月にオープン。ブッタガヤで唯一日本食メニューが食べられるだけに、某ガイドブックでも紹介され、日本人バックパッカーの情報交換の場所にもなっているそうだ。武子さんは『カフェげんき』で、1か月ほど店の手伝いをしていたそうだ。武子さんに続き、吉本さんがこう話す。 「私は66歳ですし、ブッタガヤのような気候が厳しい場所でカフェをやっているのも、そろそろかなと思うことがあるんです。でも武子さんのバイタリティとかエネルギッシュさに触れると、まだまだだなって思わされますよ。しかも彼女、物覚えが抜群に素晴らしいんです」  吉本さんがいう『物覚えが抜群に素晴らしい』という発言には、深く頷いた。武子さんが訪れたのは国だけで80ヶ国以上、都市だと数百には及ぶだろう。異国の都市名など二度三度聞いても覚え難いものだが、武子さんは今まで訪れた町の名を逡巡することなく会話に挟んでくる。  彼女の記憶力はそれだけではない。出会った人の名前、航空運賃、出来事など、無数に蓄積された名詞や数字がすらりと出てくるのだ。インタビュー中、それらを淀みなく話す武子さんに対し、顔には出さずとも心中ではかなり驚愕していたことだった。  私が武子さんにインタビューを実施したのは2017年7月中旬。6月からバンコクやプノンペンを旅した彼女は7月末に日本へいったん帰国し、2017年10月25日にふたたびバンコクの地を踏むスケジュールになっている。すでに航空券は購入しており、ゲストハウス『Long Luck』も予約済みだ。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1382707
78歳の現役バックパッカー

『Long Luck』に宿泊している若いバックパッカーたちのなかにも違和感なく溶け込んでいた

「東南アジアに来る程度は“散歩”みたいなもんだよ(笑)。10月にバンコクへ来たあとは11月20日にインドのカルカッタへ飛び、そのあとはブッタガヤへ行きます。ブッタガヤには日本寺があるので、年末年始は除夜の鐘を聞きたいのよね。あとは『カフェげんき』で2か月ほど働かせてもらうの(笑)」  78歳でこれほど精力的に旅を続けられている原動力はなんだろうか。武子さんとの二度のインタビュー中、何度か頭をよぎった謎であった。私は頭の片隅にその謎を秘めたまま話を聞いていたのだが、そこで出会ったのが世界地図をキラキラした瞳で眺める彼女の姿だった。  未知への好奇心は少しも衰えることなく、それどころか年齢とともに増幅しているのだろう。日本では2007年、総人口に占める65歳以上の割合が21%を超え「超高齢社会」へと突入した。武子さんのように高齢であっても世界を旅する生き方は、これからの超高齢化社会の日本では珍しくなくなってくるのかもしれない。  好奇心の赴くままに旅ができる彼女の堅強な肉体はどのように維持されているのか。健康かつ元気であり続けられることの秘訣を伺った。 「私、喋る声が大きいでしょ? それがいいのよ! あはははー!!」  東北弁訛りで豪快に話す78歳の旅人は、あまりにも強くて、素敵すぎる。<取材・文/西尾康晴>
2011年よりタイ・バンコク在住。バンコク発の月刊誌『Gダイアリー』元編集長。現在はバンコクで旅行会社TRIPULLや、タイ料理店グルメ情報サイト『激旨!タイ食堂』を運営しながら執筆活動も行っている。Twitter:@nishioyasuharu
1
2
おすすめ記事