更新日:2021年11月29日 07:23
エンタメ

50歳男性の「女湯侵入事件」が発生。これを珍事件として片づけてはいけない――カリスマ男の娘・大島薫

LGBTへの寛容はどこまで許されるのか?

 ということを踏まえると、今回のニュースの男性が「女性の裸を見たかった」のだとしても、心が男性だったとは限らないということになる。ただの変質者が起こした事件に見える一方、本当に昨今取り沙汰されるLGBTの一人だったかもしれない。このところよく聞かれるダイバーシティやらLGBT教育やらが浸透した未来に、こういった事件は近く新たな局面を迎えるのではないかと考えている。  例えば、この逮捕された男性がこんなことを言ったとしたらどうだろう。 「自分の心は女性だ。女性の裸には何の興味もなく、男湯で裸になるのがイヤだったので女湯に入った」  かといって、第三者が見ればどう見たって男性にしか見えない女装者だ。では、昨今のセクシャルマイノリティー受け入れへの世論を汲んで女湯や女子トイレに入れるようにするのか。果たして世の女性たちはそれを受け入れるのだろうか。  この論争は『見た目のクオリティが高ければ容認できる』というところに行きついてしまいがちなのが、また問題を難しくさせる。

「女子トイレに男性が入ること」を罰する法律はない?

 ボクがまだ男の娘AV女優だったころ、AV現場で一緒になる女装男子などでも、やはりトイレ問題はよく話題にあがった。趣味で女装をしてる人はともかく、女性ホルモン治療などを受けて心身ともに女性化していこうとする人にとってはさらに深刻だ。  そのとき、まことしやかに女装者の間で流れていた話がある。「実は男性が女子トイレに入ったことを罰する法律はない」というものだ。先に挙げた例を見ても女装男性が逮捕された例はいくらでもあるので、そんなことはないのだが、恐らく「女子トイレに入ることを罰するために用意された法律は存在しない」という噂が回りまわって、女子トイレに男性が入ること自体は問題ないという話に変わったのだろう。  そういう意味では、今回例に挙げた事件の罪名はすべて「建造物侵入罪」だ。つまり、女子トイレに入ったこの男性を捕まえるために用意された法律ではないということについては、たしかにそうだといえる。  建造物侵入罪が成立する条件としては(1)『正当な理由なく』(2)『人が看守する建造物』に(3)『侵入する』という行為(刑法130条)が、これにあたる。  では、正当な理由というのはこの場合なんなのかというと、その建造物を監守する人の裁量。だから、銭湯の管理者ということになる。極端にいえば「銭湯の人に『私は身体は男性ですが、心は女性ですので女湯に入ってもいいですか?』と尋ねて、許可してもらえれば入ることになんの問題もない。公衆トイレならそれを管理する管理室や責任者ということになるだろうか。  しかし、もしあなたがその担当者だったとしたらどこでそれを分けるだろうか。身体が男性かどうか? でも、手術をして完全な女性の身体になっていても、例えばお世辞にも女性には見えない容姿の人ならどうだろうか?  結局ポイントは「周りの人が違和感なく受け入れられるほど女性的かどうか」ということになってこないだろうか。  となると、今度は逆に「心が男性だろうと、クオリティの高い女装なら女湯に入っていいのか」ということになってくる。  言い方は過激だがそれは結局、容姿端麗な変態は受け入れられて、本当に自身の性別に悩んでいる容姿の伴わない性別違和の人は受け入れられないという世の中になってしまわないだろうか。
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LGBT用のトイレを作ればいいのか?
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1989年6月7日生まれ。男性でありながらAV女優として、大手AVメーカーKMPにて初の専属女優契約を結ぶ2015年にAV女優を引退し、現在は作家活動を行っている。ツイッター@OshimaKaoru

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