更新日:2022年12月30日 10:17
エンタメ

フジロックとサマソニの同時期に韓国でもロックフェス!?――韓国メタルシーンの今

Kポップだけじゃない! 注目したい韓国メタル・バンド

筆者所有の韓国メタルCD(筆者撮影)

 ここ日本では、00年代頃から韓国メタルの話題をしばしば聞くようになった。韓国メタルのバンド名およびアーティスト名をあげれば、BLACK SYNDROME、CRASH、JEREMY、KIM KYONG HO、MAHATOMA、METHOD、SAD LEGEND、SEOMOON TAK、SAHARA、ZIHARDほか数多い。とはいえ、ジャパメタと比較すれば圧倒的に規模が小さい。韓国産の音楽は、Kポップばかりが注目を浴びていて、メタル勢はちょっと可哀想ではある。  筆者の琴線に触れた韓国メタルは、様式美メロスピ、ポップス、演歌メタルなどが混ざったBLACK HOLE『BLACK HOLE』(1994年)、演歌調のメロディが混ざったシンフォニックブラックメタル・バンド=OATHEAN『Ten Days In Lachrymation』(2001年)、コテコテの様式美メタル=STRANGER『Sailing Out』(2002年)など。韓国メタルは、メロスピ、様式美、アニソン風、プログレメタル、シンフォブラなど、一通り揃っており、また、なんとも言えない不思議な味がある。

韓国人の血を引いた女性シンガーとメロデス人脈

左から、Sinergy『BEWARE THE HEAVENS』(1999年)、LIV MOON『DOUBLE MOON』(2009年)、Krypteria『Bloodangel’s Cry』(2007年)(筆者撮影)

 00年代の世界のヘヴィメタル・シーンでは、韓国人の血を引く女性シンガーを複数人見かけた。ここでは、彼女らを上げてみたい。  もっとも有名なバンドが、キンバリー・ゴスと、CHILDREN OF BODOMのアレキシ・ライホを中心に結成(2人は後に結婚、そして離婚した)されたフィンランドのヘヴィメタル・バンド=SINERGY(連載第8回参照)だ。キンバリーは、韓国人の父とドイツ人の母の間に生まれたハーフのアメリカ人で、日本のメタラーにもネタとして消費された時期がある。アルバムを3枚発表しており、演奏陣に凄腕が揃っていることで、メタラーからの評価が高い。  宝塚歌劇団出身でシンフォニックメタル・ユニット=LIV MOONのヴォーカリスト=AKANE LIV(岡本茜/宝塚歌劇団での芸名は神月茜)は、スウェーデンのイエテボリ生まれで、父がポーランド系スウェーデン人、母が韓国系日本人である。彼女がシンフォニックメタルを知るきっかけは、Nightwish(こちらも連載第8回参照)の「THE PHANTOM OF THE OPERA」だったようだ。  余談だが、イエテボリと言えば、In FlamesとDark Tranquillity、At The Gatesなどのメロディックデスメタルの産地として有名なエリアだ。In Flamesのイェスパー・ストロムブラードは、上記のSINERGYにも、メインソングライターとして参加していた。  3人目は、ドイツ出身のシンフォニックメタル・バンド=Krypteriaのチョ・ジイン。彼女は、在独韓国人二世である。西ドイツは1960〜70年代に、韓国から多くの炭鉱労働者と看護師を受け入れた。その際、出稼ぎとして渡独したのが、チョ・ジインの父(鉱夫)と母(看護師)である。彼ら彼女らは、外貨の獲得に貢献し、「漢江の奇跡」と称される韓国経済発展の基盤になった。ちなみに当時、西ドイツには、韓国人だけでなく日本人鉱夫も派遣されている。  日本でも発売された3rdアルバム『Bloodangel’s Cry』は、ジャーマンメタルのようなメロスピではないが、アニソンのようなキャッチーな楽曲も多く収録されている。筆者としては、音楽の内容以上に歴史的背景が面白い。
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なぜフジロックとサマソニの同時期に韓国でロックフェス?
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(やまの・しゃりん)漫画家・ジャパメタ評論家。1971年生まれ。『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)シリーズが累計100万部突破。ヘビメタマニアとしても有名。最新刊は『ジャパメタの逆襲』(扶桑社新書)

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ジャパメタの逆襲

LOUDNESS、X JAPAN、BABYMETAL、アニメソング……今や世界が熱狂するジャパニーズメタル! !  長らくジャパニーズメタルは、洋楽よりも「劣る」ものと見られていた。 国内では無視され、メタル・カーストでも最下層に押し込められてきた。メディアでは語られてこなかった暗黒の時代から現在の世界的ブームまでを論じる、初のジャパメタ文化論。★ジャパメタのレジェンド=影山ヒロノブ氏(アニソンシンガー)の特別インタビューを掲載!

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