更新日:2022年12月30日 10:17
エンタメ

フジロックとサマソニの同時期に韓国でもロックフェス!?――韓国メタルシーンの今

<文/山野車輪 連載第32回>

黎明期の韓国メタル・シーンを切り開いた3バンド

 筆者は一時期、たぶん日本一だったのではないかというくらい、韓国という国を好んでいた。韓国という国が面白くって、群山市や木浦市、東海市などマイナー地域、そして済州島や鬱陵島など、韓国全土を旅行した。また、日本国内にあるコリアタウンについても、おそらく筆者がもっとも多くの現地を訪れているという自負がある。

ソウルにあった古物屋さん。日本のアニメ商品が目立つ(2007年、筆者撮影)

 日本と韓国の間には、政治や領土その他さまざまな問題が山積している。かつて我が国では、韓国批判がメディア・タブーとされていたことは、皆さんご存じの通りだろう。筆者は2005年、そのタブーに抗って、カウンター言論としての『マンガ嫌韓流』を出版した。  2012年、当時の李明博大統領の竹島上陸と天皇陛下への謝罪要求に、さすがの日本国民も堪忍袋の緒が切れた。それ以来、ようやくマスメディアで日韓間の問題が取り上げられるようになり、その結果として両国の関係は悪化することとなった。  とはいえ、それはそれ、これはこれである。パクリおよび捏造歴史による政治プロパガンダ作品などは別として、基本的には文化には罪はない。筆者は分別して捉えるべきと考えている。  というわけで、今回は韓国とヘヴィメタルについて述べてみたい。  筆者は00年代、韓国趣味の流れでコリアンメタルも聴いていた。とはいえあの頃は、ヘヴィメタル専門店でもあまり韓国のメタルCDは扱っておらず、棚に並ぶわずかなコリアンメタルの輸入盤CDを大人買いする程度だったが。  韓国のメタルは、SINAWE(シナウィ)、BOOHWAL(復活/ブファル、부활)、BAEKDOOSAN(白頭山/バクドーサン、백두산)が3大メタル・バンドとされ、黎明期を切り開いた。今から30年前、1988年開催のソウルオリンピック以前あたりから、盛り上がり始めたようだ。  SINAWEは1983年にソウルで結成され、1986年にアルバム『HEAVY METAL SINAWE』を発表している。これはメタルっぽくなく、メタラーには厳しい内容だ。

韓国初の本格的ヘヴィメタルバンドとして1986年デビューした伝説的グループの1stアルバム『HEAVY METAL SINAWE』。デビュー曲「大きくラジオをつけて」や名曲「あなたの前で私はロウソクだ」を収録。専門エンジニアの不在と冷遇の中で育ってきた韓国ロック文化、当時の規制による創作力の制限などを象徴するアルバムだが、「韓国大衆音楽100大名盤」の32位に選ばれるなど高い評価を受けている。

 BOOHWALは一応メタル・サウンドをしている。今の時代だとメタルには聴こえないが、80年代ならば許容範囲内だろう。「LOUDNESSに挑戦状を叩きつけた」との噂がメタルマニアの間で話題になった事でも知られている。この件について『BURRN!』では、挑戦状を叩きつけたのはBAEKDOOSANと記されているが、誤報である。

初期作品のベスト盤Boohwal『Best 2』

 BAEKDOOSANは、1987年にアルバム『The Moon On The Baekdoo Mountain』を発表。イモ臭くドタバタしているが、正統派メタルだ。演歌のように泣きまくるインスト曲もあり。C級メタルが好きな人ならばアリだ(筆者はアリ)。彼らは2006年に再結成している。
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Kポップだけじゃない! 注目したい韓国メタル・バンド
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(やまの・しゃりん)漫画家・ジャパメタ評論家。1971年生まれ。『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)シリーズが累計100万部突破。ヘビメタマニアとしても有名。最新刊は『ジャパメタの逆襲』(扶桑社新書)

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ジャパメタの逆襲

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