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記者殺害のサウジアラビアは、サウド家の私物なのだ<倉山満>

石油を依存する我が国には中東情勢は重大な関心事だ

 こんな国が「比較的穏健」となる時点で、いかに中東が我々日本人と異なる過酷な世界であるかが理解できよう。  中東は’48年の第一次中東戦争以来、「10年に1回、戦争が起きる地域」と言われてきたが、イラク戦争以降は紛争が慢性化している。  理由はもちろん、アメリカのイラク戦後の処理が稚拙で、平和秩序とかけ離れてしまったからだ。そこにアラブの春が輪をかけた。  フェイスブック革命以前、中東諸国は2つのうちどちらかの方法で秩序を保っていた。一つは軍国主義により正気を保つ方法。エジプト、リビア、チュニジアは、軍に権力基盤を置く大統領の独裁により国をまとめていた。革命により政権を倒したはいいが、どこの国でも軍の主導による秩序回復が渇望されている。どこの国でも民衆の多数の意思に任せれば、「イスラムの教えに従って生きたい」となるので、国がまとまらないからだ。  ヨルダンなどは国王と軍を中心にまとまる傾向があるが、サウジより少しだけマシとされるクウェートの王家は、イラクに侵略された時に国民を見捨てて真っ先に逃げ出した連中だ。  正気を保つもう一つの方法は、ファシズムだ。イランの宗教原理主義がこれに近い。つい最近までは、イラクとシリアが、バース党独裁により国をまとめていた。イラクもシリアも宗教も民族もバラバラなので、独裁政党が力ずくでまとめ上げるしかなかったのだ。  今や国としてのシリアなど跡形もないが、それでもシリア・バース党のバシャール・アサドは「21世紀に入って最も人を殺した独裁者」の記録を更新しながら今日も戦っている。  さて、石油を依存する我が国にとっても中東情勢は重大な関心だ。では、彼らとどう付き合うべきか。  国益に従って付き合うべきである。  間違っても、問題を解決しようなどと考えてはならない。問題は解決しないから問題なのであって、対処し続けるしかないのだ。  日本人はなまじっか問題解決能力が高いから「世界を平和に」などと考えるが、やめたほうが良い。
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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