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「バンクシーの作品発見」実は日本初ではない!? 現役グラフィティ・ライターVERYONE「バンクシーはうさんくさい」と評価

 覆面アーティスト・バンクシーのステンシル(型紙にスプレーをした絵)とみられる作品が、東京都の日の出駅付近で発見された。1月16日に東京都はその作品を取り外し、保管している。報道によれば、専門家は「本人の作品である可能性が高い」とコメントしている。

 今回発見された作品は、バンクシーがよくモチーフとしているネズミの絵。数年前にバンクシーが極秘来日していたという噂があり、そのときにBOMB(グラフィティの用語で、街中にスプレーなどで作品を描くこと)されたものではないかと見られているようだ。

 バンクシーと言えば、昨年10月5日にロンドンのオークションハウス「サザビーズ」で作品が1億5000万円で落札された直後に、その絵が公衆の面前で裁断された「事件」で、改めて注目を浴びたのも記憶に新しい。

 街中でスプレー缶などでグラフィティを描く行為は、もちろん日本でも軽犯罪法違反。だが、「ストリート・アート」として評価をされることもあり、さらにバンクシーほど有名になると、その作品がBOMBされれば「高値で売れる」「街の宝だ」と喜ばれるという状況だ。だが、例えばバンクシーがニューヨークで1か月に渡る連日パフォーマンスを行ったときにも、当時のニューヨーク市長・ルドルフ・ジュリアーノは「バンクシーは逮捕する」といった主旨の警告を記者会見で発した。このように、グラフィティに対する評価は「迷惑行為なのか、アートなのか」という議論がいつもつきまとう。

アート集団「Torary Project(トラリープロジェクト)」のトラックに書かれたVERYONE氏のグラフィティ。VERYONE氏インスタグラムより転載

 もちろん、違法行為でもあるグラフィティを描くグラフィティ・ライターは表に出てくることは滅多にない。だが、今回、我々は日本のグラフィティの世界で著名なVERYONE氏に接触することに成功した。彼ら、グラフィティ・ライターはバンクシーのことをどのように評価しているのだろうか?

「バンクシーはステンシル・アーティトとしては見せ方がうまいけど、グラフィティ・ライターとしての僕から見れば『(アート)業界内の人』っていう感じですよね。いつもメディアが付いて回っているし、普通、ストリートでやっていれば、ネズミのステンシルが見つかったぐらいじゃ、ニュースにならないんで。何も知らない人からすると、彼の作品やパフォーマンスはすごい面白いし、『覆面アーティスト』っていうのは聞こえがいいんでしょうね。でも、こっちからすれば『顔出したらあかん』なんて当たり前やし、それが話題に上っているってところがすごくうさんくさい、と思いますけどね」

 VERYONE氏も「グラフィティをやっている」と人に言うと「バンクシーみたいなことをやっているの?」と聞かれることが多いというが、バンクシー自身も一般的なグラフィティとは一線を置いているだろう、という。では、そもそも、イリーガルなので逮捕される危険性があるにも関わらずグラフィティをやるというのは、どういう衝動性なのだろうか?

『名前を残すゲーム』なんで。絵ではなく文字、自分の名前を街に『書く』っていうのが大前提なんですよね。それをかっこよく、シブい場所に残すのが、グラフィティ・アートのかっこよさ。この文字を書いているところが、一般的なアートと全然違うところで。絵を描く人もいますけど、グラィフティのアーティストのことを『グラフィティ・ライター』っていうのは『文字書き』なんで、『ライター』って呼び合うんですよ」

VERYONE氏のグラフィティ。本人インスタグラムより

 ちなみに、バンクシーの作品が高額で取引されていることについてはどう思うのだろうか?

「んー。まぁね、僕もたまにお金もらったりするんで、あんまり言えないですよね(笑)。でも、僕も世界中の街に行ったりしますけど、バンクシーの作品を見たことがないし。多分、ロンドンとか行きゃ、あるんでしょうけど。僕にとっては『テレビで作品を観る人』ですし、『メディアに出てくる人』って感じですよね。あ、でも16年ぐらい前に大阪で見かけましたよ、ネズミの作品は。『あ、バンクシーや』って」

 なんと、今回、バンクシーの作品が発見されたのは日本初と言われているが、16年ほど前にすでに大阪には上陸していた可能性がある、というのだ! やはり日々、路上で活動しているグラフィティ・ライターならではの発見だろう。違法行為とアート性が混在するグラフィティ、そして路上にこだわり続けるアーティストの世界を垣間見た思いである。

VERYONE氏のグラフィティ。本人インスタグラムより

取材・文/織田曜一郎(週刊SPA!)





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