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年金デモを「税金泥棒」と呼んだホリエモンの没落/古谷経衡

堀江の下品さと無学はもはや不可逆であろう

 私はかつて熱心な堀江信者に出会ったことがある。アラフォーで学歴は大東亜帝国かどこかの大卒で、「ライブ(配信)メディアの起業」を常に言い続けている異様に自己評価が高い男で、名刺だけはすでに作っていた。そこにはまだ法人登記もしていない「将来興す会社の名前」が印刷されており、自身の肩書はそのCEOだと設定されていたが、彼の貯金は100万円を切り、「ブレスト(会議)」の重要性を説いては堀江を「神」として崇め奉っていた。  彼には何もなかった。無職だった。しかしなぜか、Appleの最新シリーズだけは保有していた。こういうのが堀江を支える岩盤層で、今回の「年金泥棒」発言では「みんな堀江さんの行間を読んでいない馬鹿」と堀江を擁護した。どう行間を読んでも堀江が無知蒙昧であることは決定的だが、「信者」とはそういうものだ。  私はかつて堀江を尊敬する部分があった。それは堀江が逮捕される前、何かの雑誌でアニメ映画『王立宇宙軍オネアミスの翼』に影響を受けて、将来宇宙事業に関わりたい、と語っていたことだ。 『王立宇宙軍』は’87年の作品で、この作品を契機に、のちにエヴァを生み出すガイナックスが設立される。不朽の名作に影響を受けたという堀江に親近感を感じたが、少年老い易く学成り難し。堀江の下品さと無学はもはや不可逆であろう。
(ふるやつねひら)1982年生まれ。作家/評論家/令和政治社会問題研究所所長。日本ペンクラブ正会員。立命館大学文学部史学科卒。20代後半からネトウヨ陣営の気鋭の論客として執筆活動を展開したが、やがて保守論壇のムラ体質や年功序列に愛想を尽かし、現在は距離を置いている。『愛国商売』(小学館)、『左翼も右翼もウソばかり』(新潮社)、『ネット右翼の終わり ヘイトスピーチはなぜ無くならないのか』(晶文社)など、著書多数
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