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EXIT兼近の逮捕歴報道に、貧困家庭で育った私が感じた“負の連鎖”

 2019年9月5日発売の『週刊文春』が、人気お笑いコンビ「EXIT」の兼近大樹さん(28)が2011年11月に売春防止法違反容疑で逮捕されていたことを報じました。兼近さんは、文春記者の直撃取材に対して「そうです」と事実を認めたうえで、自身の生育環境や交友関係、そして事件にいたった経緯を語り、さらに彼のTwitterでも、報道についての心情と謝罪の意思を示しています。

貧困家庭で育った筆者が感じたこと

 今回私が筆を執ったのは、彼の過去の罪を批判するためでも、擁護するためでもありません。貧困家庭に育った人とそうでない人が、「違う世界」に生きている互いを理解し、社会全体として、この格差をどのように解消していくかを議論するための材料になってほしいと考えています。 ===== ※編集部註: 1991年、北海道札幌市に生まれた兼近大樹は、母と4人きょうだいの貧しい家庭に育つ。定時制高校を中退して新聞配達や鳶職で家計を支え、10代で風俗産業に勤める。20歳の時、売春防止法違反で仲間3人と共に逮捕され罰金刑に。週刊文春の取材に対して兼近は事実を認め、「一緒に育ってきた周りがみんなそっち(不良グループ)」で、そういう人生が「当たり前になっちゃってた」と語った。 =====  兼近さんがそうであったように、まわりに「文化資本」(学歴や文化的素養)を持つ家族や知人がいない環境で生まれ育った人たちの間では、閉ざされた狭いコミュニティの中で、年長者から年少者へ「非行」が連鎖しやすい傾向にあります。例えば、地元で不良の先輩の姿を見ていた中学生が、同じように煙草を吸い始めたり、恐喝、傷害に手を染めるのはそうした連鎖の典型ではないでしょうか。「水は低きに流れ、人は易きに流れる」と言う言葉があるように、人間(を含む動物)とは本来、手っ取り早く楽な道を選んでしまうものです。  そして文化資本を持たない貧困家庭ほどその傾向は強く、借金をして投資につぎ込むとか、マルチ商法などの安易でリスクの高い「一発逆転」の儲け話に乗ってしまうなど、結果的にさらに自分たちを困窮させてしまうこともあります。

「全員切って、東京行け!」という助言

 何より厄介なのは、こうした環境からは自力で脱出することが大変困難である、という点です。そもそも当事者たちにとっては生まれ育った環境こそが「普通」であり、それ以外の世界を知らないがために、今置かれている状況に不安や、疑問を抱くこともないのです。
 幸い、兼近さんが閉鎖的なコミュニティから逃れられたのは、逮捕をきっかけに、携帯番号や連絡先を変えるなど、強い意思を持って地元の知人らとの関係を絶ったためでしょう。『週刊文春』によると、「字が読めなかった(笑)」と言う兼近さんは、勾留中に相部屋の男性から読み方を教えてもらい、本を読んだといいます。  それが「自分は違う世界で生きていた」「外れてる道をただ走っていた」という「自分の生育環境への疑問」に繋がったことは、彼にとっては人生の大きな転機だったと言えるでしょう。  さらに、彼の「負の連鎖からの脱出」を後押ししたのは、彼がまた別件で拘留されたのち、嫌疑が晴れて、釈放された際に関わった“警察の人”でした。兼近さんが「全員切って、東京行け!」という助言を素直に聞き入れることができたのも、“警察の人”が「関係している人が全員悪い人だから」と彼を説得し、また、自分の周りの人間がみんな反社会的、あるいは不良グループであることに彼自身が気付けたためだと考えられます。  兼近さんの知人が「『あんなに世話をしてやったのに、何なんだ』と怒っている地元の人間は少なくない」と証言していることからも伺えますが、地元の人たちにとっては、仲間が外の世界へ行くことは「裏切り行為」であり、道理に反することなのです。こうした家庭内や交友関係の「地元意識」は大きな圧力となり、たとえ本人が今の環境から脱出したいと考えていたとしても、実行を思いとどまらせてしまう要因のひとつとなります。
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私の周りも前科者だらけだった
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