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酒場で不倫の武勇伝を語りたがる男たち…なぜ?――酔いどれスナック珍怪記

 酒が理性を麻痺させるのか、俺がどれほどの男かを吹聴するためのマウントか。スナックで繰り広げられるおっさんの色恋話、その大半は不倫自慢というのが悲しいながらも現実だ。なぜ、男は酒場で誰の得にもならない背徳の武勇伝を語りたがるのか……悲しい虚栄心の正体を筆者が解明する。

第八夜 酒は吐いても秘密は吐くな

「実はあいつとホテル行っちゃったんだよね」 「ここだけの話、○○と不倫してるんだけど」  飲み屋にいると聞いてもいないのにそんな報告をよくされる。もうほんとにされる。ちょっと理解ができないレベルでされる。アホなのかなって思う。  酒が入ると人間口が軽くなるのは常なので、わたしもよくどうでもいい男に「そういうところ好き♡」とか言ってみたり、まるで共通点のないつまらない男に「○○さんとわたしって意外と似てる部分があるからよくわかるよ♡」とか言ってみたりした結果毎日大好きLINE攻撃を受けて、シカトしていたら逆ギレされたりして激しく後悔する後日談が残ったり、かと思えばわりとマジで好きな男にもうっかり「すき……(少女漫画風。背景トーンはキラキラとモヤの混じったやつ)」とかぶっちゃけてしまって、でもそんなことは日常的にやっているちゃらんぽらんな女だと思われているから、真剣に受け止められず適当にスルーされてやっぱり激しく後悔する後日談を残してしまったりする。酒を飲みながら紡がれる言葉なんてこの世で一番ろくでもない。  だけど、どんなに酔っぱらっていても、なんとなく自分の中で話すことにストッパーをかけている事柄というかルールみたいなものがあって、人様に対して現在進行形の恋愛話とか自分の男女関係についての話はしないようにしている。たぶんこれは、わたしが人に口外しちゃいけないような恋愛、簡単にいうと不倫とか誰かの何番目かの彼女とか、相手がバンドマンとか相手がバーテンダーとか相手が社会的によろしくない勢力だったりとかそんな恋愛ばかりしてきた後遺症的によるものだと思ってもいるふしもあるけれど、店に立っている時に「この間セックスした男がクソでさぁ~」みたいにあたかも現在の事柄のように話していることは実は全部ネタとして消化してしまった過去の話であることが多い。
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まだ現役なのを見せつけたい
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