更新日:2019年10月25日 23:07
ライフ

海底に沈めて熟成させたワインの味わいは? “沈没船熟成風ワイン”を飲んでみた

~ 第69回 ~ 「没船からシャンパンが引き上げられ、実際に飲むことができた」という逸話はいくつか残されています。1998年には、1916年に沈没したジョンコピング号から「エドシック・モノポール」というシャンパンが引き上げられました。他にも多数のワインやコニャックを搭載していたのですが、「エドシック・モノポール」だけが完全な状態に保たれていたのです。そのため、奇跡のシャンパーニュと呼ばれるようになりました。  2010年には、バルト海で170年前に沈没した帆船から引き上げられました。168本のシャンパンが引き上げられ、今は存在しない「ジュグラー」という銘柄と、「ヴーヴ・クリコ」ということが判明したのです。フィンランドで試飲会が開かれ、愛好家達が楽しみました。当時のシャンパンは今のものよりずっと糖分が多かったようです。  この2つはスパークリングワインだからこそ、生き残ったのです。瓶の中で発生する炭酸ガスの圧力が、水圧による浸水を防ぎ、熟成を進めることができたのです。

沈没船と共に沈んだお酒でも、スパークリングワインであれば、生き残るチャンスがあります

 暗い海の底で人知れず眠っている酒瓶。その価値を知らず船倉をねぐらにするシーフード達。100年を超える歴史には浪漫を感じずにはいられません。

海底熟成ワインを飲んでみたところ……

 2015年、上野の国立科学博物館でワイン展が開かれました。そこに、なんとバルト海で引き上げられたシャンパンのうちの1本が来日し、展示されるというのです。当時、海底熟成にはまり始めたところでしたので、もちろん飛んでいきました。  国内では珍しい大規模なワイン展でとても勉強になったのですが、肝心の沈没船から引き上げられたシャンパンの瓶はキレイに洗われていて、膝から崩れ落ちそうになりました。「意味ないよ!」と心の中で叫んで、出てきた記憶があります。  先日、友人同士でそんな海底熟成の話で盛り上がり、だったら持ち寄って飲み比べてみようということになりました。

3本の海底熟成ワインをそれぞれ持ち寄って飲み比べてみました。

 筆者が持参したのは自分で海に沈めた「シャンドン ブリュット」。フランスのシャンパンメゾンであるモエ・エ・シャンドンが設立したシャンドン・オーストラリアが作っているスパークリングワインです。ブドウはシャルドネとピノノワールをブレンドしており、爽やかな味わいが人気です。伝統的なシャンパンと同じ方式で造っている辛口ワインですが、なんと価格は2000円強といったところで、気軽に楽しめるのが嬉しいところです。  通常、海底にお酒を沈めて熟成させる際は、密封できる特殊な容器に入れるか、元の瓶を利用する場合は蝋封する必要があります。しかし、沈没船から引き上げられたシャンパンがそのまま飲めたという逸話を参考に、試しにそのまま海に入れてみたのです。海底熟成期間は約7か月です。  海底熟成のシャンドンを飲んだことがある人はいないと思いますが、超絶美味しくなっています。甘やかでやさしく調和された味わいですが、泡もきちんと残っており、元々の値段が2000円というのは信じられません。単に、購入してから何年か経っているので、お酒が落ち着いて美味しくなっている部分もあるかとは思いますが、それでも海底熟成には浪漫を感じます。

7か月も沈めていたので、もちろん金具はさびています

ドロップストッパーを入れてワインを注ぎます。泡立ちも強くまったく問題ありませんでした

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2本目は見た目が凄い
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お酒を毎晩飲むため、20年前にIT・ビジネスライターとしてデビュー。酒好きが高じて、2011年に原価BARをオープン。2021年3月には、原価BAR三田本店をオープンした。新型コロナウイルス影響を補填すべく、原価BARオンライン「リカーライブラリー」をスタート。YouTubeチャンネルも開設し生き残りに挑んでいる

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