更新日:2023年05月07日 13:52
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和牛、ミキ、「M-1」準決勝でなぜ彼らは敗れたのか? アインシュタイン、トム・ブラウンも…

「笑いの上積み」が求められた「トム・ブラウン」

 準決勝で一番ウケたコンビは「トム・ブラウン」と聞いている。準々決勝もメガトン級にウケたと聞いた。俺は、彼らの事務所であるケイダッシュステージでネタ見せを担当しており、ネタを事前に見たが、「2年連続あるぞ」という印象だった。しかし、彼らは敗退した。  おそらく「上積み」を期待されたのだと思う。どれだけウケても「昨年と一緒だ」と思われれば落とされるのだ。「『笑いの上積み』があるじゃないか」と俺は思う。ただ、「『M-1グランプリ』はテレビ番組」という一面がある。「新人発掘番組」であり、今までの実績から「何か新しいものが見られる」という視聴者の信頼と期待感もある。だから逆に言えば、「連続決勝進出」をしているコンビは、すでに快挙を成し遂げているのである。「上積み」という部分で「見取り図」は勝利し、「トム・ブラウン」と「ミキ」は破れたのかもしれない。敗者復活戦で大暴れをすることを期待する。  お笑いファンには嬉しいが、出場者を悩ませる存在が動画配信である。3回戦、準々決勝で披露したネタを動画配信サイト「GYAO!」で配信されるのだ。幸い、準決勝に進出すれば準々決勝のネタを配信されないが、3回戦で配信されたネタを準決勝で披露しているコンビが数組いた。その中に決勝進出したコンビもいる。  準決勝は平日の17時に開演するチケット代6000円のライブである。それを見に来るお客さんは相当なお笑い好きであり、全員が3回戦の動画をすべて見ていると思って挑むべきである。  そのうえで「知っていてもウケるネタ」と「知っていると笑いが落ちるネタ」がある。「面白いフレーズ」やその人自身の「言い方」が面白いコンビは「知っていてもウケるネタ」だろう。逆にネタが「物語」のようなコンビは「知っていると笑いが落ちるネタ」だと思う。自分たちはどちらのコンビなのかを精査して挑まない限り、準決勝の舞台でウケを取ることは難しいと考える。
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一組だけ対戦相手が違った「和牛」
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1972年、大阪府生まれ。1992年、11期生としてNSC大阪校に入校。主な同期に「中川家」、ケンドーコバヤシ、たむらけんじ、陣内智則らがいる。NSC在学中にケンドーコバヤシと「松口VS小林」を結成。1995年に解散後、大上邦博と「ハリガネロック」を結成、「ABCお笑い新人グランプリ」など賞レースを席巻。その後も「第1回M-1グランプリ」準優勝、「第4回爆笑オンエアバトル チャンピオン大会」優勝などの実績を重ねるが、2014年にコンビを解散。著書『芸人迷子

芸人迷子

島田紳助、松本人志、千原ジュニア、中川家、ケンドーコバヤシ、ブラックマヨネーズ……笑いの傑物たちとの日々の中で出会った「面白さ」と「悲しさ」を綴った入魂の迷走録。

⇒試し読みも出来る! ユウキロック著『芸人迷子』特設サイト(http://www.fusosha.co.jp/special/geininmaigo/)

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