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なぜ今、「一律給付」と「消費減税」が必要なのか?/江崎道朗

安倍首相

安倍首相は緊急事態宣言を発令し、事業規模で総額108兆円の緊急経済対策を発表。これは日本のGDPの約2割に相当し、’08年リーマン・ショック後の対策の2倍に相当。過去最大の規模というが、真水部分は20兆円に満たないと思われる

なぜ今、「一律給付」と「消費減税」が必要なのか?

 我々は今、二つの危機に直面している。一つは、新型コロナウイルス感染拡大の危機だ。この危機に対して安倍首相は4月7日、7都府県を対象に「緊急事態」を宣言し、外出自粛によって感染拡大を抑制する方針を示した。経済的損失を覚悟のうえで国民の大半は「政府の要請」に協力するだろう。  もう一つは、「日本経済は戦後最大の危機に直面している」(安倍首相)ことだ。この危機を乗り切るため、同じ日に、安倍首相はGDPの2割に相当する「108兆円」の緊急経済対策を発表した。  それでなくとも昨年10月の消費増税で景気は悪化していた。そこに新型コロナの影響で日本経済は本年度GDPでマイナス10%、実に55兆円もマイナスになるのではないかと言われている。  その穴埋めを政府の財政出動でしておかないと、国民経済は致命的な打撃を受ける。このため政府は今回、108兆円もの緊急経済対策(補正予算)を打ち出したわけだ。  ただしこの数字は「事業規模」だ。多くの経済学者が指摘しているように「真水」、つまりGDPを押し上げる効果がある政府の財政支出がいくらかが重要だ。  実はこの108兆円には昨年12月に閣議決定された26兆円の経済対策の未執行分が入っている。よって、新規対策は82兆円。しかも中小企業向けに実施する納税や、社会保険料の支払い猶予のための26兆円は「財政支出」ではない。

経済対策108兆円のうち真水は20兆円未満

 実際の「真水」に相当するのは「大変困難な状況に直面している家庭(一世帯30万円)、児童手当の上乗せ、中小・小規模事業者に対する現金給付と地方税減免」8兆円、「医療体制の整備と治療薬の開発」2.5兆円、「観光や農林水産業への補助金」8.5兆円などで、総計で20兆円に満たないと言われている。  現に、この補正予算に伴う新規国債発行額は16.8兆円だ。量としては不十分だ。この財政出動の出し渋りをした事務方のトップは、財務省の岡本薫明事務次官だ。  しかもこの財政出動の恩恵を直に受けることができるのは、一部の人に限られる。今回の2つの危機は、国民すべてに襲いかかってきている。よって、「給付金を一律10万円配布すべきだ」という案が与党や野党の一部からも出されていたのだが、これを否定したのが麻生太郎財務大臣だ。

「消費税減税」と「一律給付」に今こそ踏み切れ

「日本の尊厳と国益を護る会」など自民党の若手議員約100人が消費税を一時的に減税すべきだと主張したが、これを却下したのが甘利明・自民党税制調査会会長だ。  よって、一部の人たちだけに「30万円給付」となった(※)のだが、日本は申請主義なので本当に困っている人に行き渡るかどうかもわからない。この欠陥制度を決定したのが、安倍首相と岸田文雄・自民党政調会長だ。  だが、今回の危機は簡単に収まりそうもない。よって改めて真水の追加、つまり「一律給付」と「消費減税」に踏み切ることで、国民一丸となって2つの危機に立ち向かう態勢を整えるべきではないだろうか。自民党若手と野党の一部の奮闘を期待したい。 ※編集部注:政府・与党は4月16日、減収世帯限定の30万円給付を取り下げ、「国民1人あたり一律10万円給付」という異例の決定をした ※週刊SPA!4月14日発売号より’62年生まれ。九州大学文学部哲学科を卒業後、月刊誌編集長、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、外交・安全保障の政策提案に取り組む。著書に『日本は誰と戦ったのか』(ベストセラーズ)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)など
週刊SPA!4/21号(4/14発売)

表紙の人/ 上戸彩

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