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コロナに揺れる演劇界。4か月失業状態だった演出家、まだまだ続く苦悩

 新型コロナウイルスの感染防止、3密を避けるため、舞台やコンサート等のイベントは軒並み中止に。なかでも大きな打撃を受けた演劇界の実情を取材した。
生き残れない仕事

劇団「壱劇屋」の座長である大熊さんのツイッター(@okuma_ryutaro)。仕事がなくなったことで始めたnote「失業夫婦」が話題に 撮影:河西沙織

クラスターに揺れる舞台関係者の悲哀

 7月に入り、小規模での公演が徐々に再開していた演劇界。その直後に山本裕典が出演した公演や、横浜流星主演の舞台の稽古場などでクラスターが発生し、再び大きな打撃を負った。これに「正直、出るだろうなと思っていた」と話すのは、舞台演出家の大熊隆太郎さん(33歳)。 「劇場公演に関して感染対策のガイドラインはありますが、主催側の判断に任されていて、対策の程度に幅があるのが現状です。演劇って稽古の期間が長かったり、密な空間が小劇場の一番の魅力ですけど、感染が出たらすべてが台無しになる。だから、ああいうニュースが出るとお客さんだけでなくて、僕らも心苦しくなるんですよ……」  主に劇場を生業にする劇団にとって、コロナの影響は大きい。大熊さんも4月から7月まで失業状態で、「収入がほぼなくなり、貯金を取り崩さないと生活はできない」と話す。 「コロナがはやり始めた頃は楽観的に考えていましたが、5月の連休明けに夏~秋の舞台が一斉になくなって。劇場のキャンセル料など100万円近くの損失は劇団の貯蓄でなんとか賄えましたが、給付金はすべて生活費で消えていきましたね。奥さんも演劇業に携わっているので表現と発信の場は失ったらダメだと、夫婦でnoteYouTubeを始めて、再開のときまで耐えている状態でした」

観客数の制限や感染対策費で公演予算がコストアップ

 今後、彼らを苦しめるのは公演予算のコストアップ問題だ。 「観客数が制限されれば、チケットやグッズの収入で補っていくしかない。さらに劇場内外の感染対策費もかかってきます。公演数を増やしたり、オンライン配信だったり、これまで以上の負担は覚悟してますね」  8月からは少しずつ公演を始めたというが、第2波ですべてがなくなるリスクも抱えている。 「世の中は変わらずに進んでいきますが、公演自粛が長引けば演劇界は縮小していくだけですよ。ウチの劇団員も大半が就職経験もないので、不安な気持ちを抱えたまま活動しています」  コロナが収束してもエンタメ界の損失は計り知れないのだ。
生き残れない仕事

劇場がまた埋まる日はいつ来るのだろうか

<取材・文/週刊SPA!編集部>
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