ライフ

『鬼滅の刃』鬼舞辻無惨と童磨だけが本当の鬼である理由

刀

無惨と童磨の共通点

 鬼舞辻無惨の行動理由は「太陽を克服すること」です。無惨は人間だった頃に重い病を抱えていました。そして、その病をある医者に治療してもらったところ、人よりも強い鬼の肉体を手に入れると同時に「太陽の光を浴びると滅ぶ」という弱点を持つことになりました。  だからこそ、彼は太陽を克服するために、医者が処方した治療薬の材料である「青い彼岸花」を配下の鬼たちに探させ、同時に「太陽を克服する者が現れるかもしれない」と期待して、鬼を増やしていました。このことについて、彼は「そのために増やしたくもない鬼を増やしていた」と語っています。  無惨にとっては自分の配下の鬼たちも、目的を達成するための道具でしかありません。彼は誰とも心を通わすことなく、太陽を克服することに固執しています。だからこそ、同族すら軽んじてもまったく良心が痛むことのない、完全な悪役なのです。  一方、童磨は人間だった頃から、誰かに対して気持ちが動くということがありませんでした。彼は「万世極楽教」という新興宗教の教祖夫婦に生まれましたが、彼の父親は女信者に手を出す色情狂で、そのことに怒り狂った母親によって刃物で滅多刺しにされて殺されています。  童磨はこの光景を目の当たりにしていますが、ただ「部屋を汚さないでほしい」「血の匂いがひどいから換気がしたい」と思うだけでした。これは決断や行動の理由が「誰か」ではなく、「何か」になっていることを表しています。  心情と感情は異なります。誰かについて浮かぶのが心情であり、何かについて浮かぶのは感情です。待ち合わせの相手が遅くてイライラするのと、パソコンの起動が遅くてイライラするのは、厳密には異なります。童磨は部屋や空気といった「何か」に対する感情はあっても、「誰か」に対する心情がありませんでした。

結びつきが人を強くする

『鬼滅の刃』はフィクションですが、これは現実にも当てはまります。決断や行動の理由がお金や地位や効率といった「何か」になっている人間は温もりがなく冷酷です。自分の心情に対する自覚が欠けているせいで、自分も相手も動かせません。そして、それが仕事やプライベートで人に嫌われて、物事がうまくいかない原因になっています。こうした傾向が強ければ強いほど、人は救いようがなくなります。  心情が誰かに対して浮かんでくることは、私たちの心が「人との結びつき」で出来ていることを意味しています。自信、勇気、情熱は観念の産物ではなく、「あの時、あの人が、ああ言ったから」あるいは「あの時、あの人が、ああしたから」という体験から生まれます。自分や相手を動かす力は、家族や友人や同僚といった身近な人間関係から見つかるのです。  お金や地位や効率がどうでもいいということではありません。大切なのは、「何か」と「誰か」を両立することです。勉強ばかりする人間を「頭でっかち」と言いますが、頭でっかちが悪いのではなく、同時に心も大きくしていくことが必要なのです。 佐々木
コーチャー。自己啓発とビジネスを結びつける階層性コーチングを提唱。カイロプラクティック治療院のオーナー、中古車販売店の専務、障害者スポーツ「ボッチャ」の事務局長、心臓外科の部長など、さまざまな業種にクライアントを持つ。現在はコーチング業の傍ら、オンラインサロンを運営中。ブログ「星を辿る」。著書『人生を変えるマインドレコーディング』(扶桑社)が発売中

人生を変えるマインドレコーディング

人はなぜ続けることができないのか? 続けるには「信念」が必要だ!

1
2
★アニメ『鬼滅の刃』(第1話~第26話)はdTVで配信中

おすすめ記事