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「社長が口にするとNGな、菅首相がよく使う言葉」に納得/鴻上尚史

先進国ではありえない、現政権の記者会見

 石原さんは続けます。 「工場で製造ラインにトラブルが発生し、早くどうにかしないと生産がストップしてしまう状況だとします。そっと様子を見に来た社長が、その2の『引き続き緊張感を持って、事態を注視していきたい』と言ったら、工場にいる全員が即座に手を止めて家に帰るでしょう。役員会議で『表示の偽装が判明しました』と報告されて、こう答えたとしても同じ。その場で解任動議を出されても仕方ありません」  緊張感を持って見続けても、何も変わらないんですよねえ。今、やらないと。 「会社というところは、トラブルの火種が常にくすぶっています。セクハラやパワハラ、モラハラやイジメ……。被害を訴える部下や事態の深刻さを報告する部下に対して、社長が『一日も早く収束させ、安心して暮らせる日常を取り戻すために全力を尽くします』と人ごとみたいな言い方をしたら、その日のうちに社員全員が辞表を出すでしょう」  石原さんは他にも、「丁寧な説明をしていきたい」(まずは何をどう説明するつもりかを丁寧に説明してほしい)や「専門家の意見を聞きながら判断した」(暗に「こうなったのは専門家のせいだ」と責任を押し付けている)など、言ってはいけないお手本を頻繁に繰り出してくれています―と解説しています。  こうなると悲劇を通り越して喜劇だとも書いています。  確かに、石原さんの文章を読みながら、笑ってはいけないと思うのに思わず笑ってしまいました。

喜劇からまた悲劇に

 石原さんはまとめます。 「世の中の社長さんにおかれましては、『ああ、これは言ってはいけないな』『こんなこと言ったら間違いなく会社はつぶれるな』と感じていただけたでしょうか。社長に限らず、上司やリーダーの立場にある方も、ぜひ参考にしてください」  と皮肉をきかせます。  最後に、「こうして反面教師にさせてもらえてありがたい限りです。ところで、首相といえば、日本という国の社長みたいなもの。経営状況がよくない国の“社長”が、言ってはいけないセリフを連発しています。企業ならとっくにつぶれていそうですけど、はたして大丈夫なんでしょうか。もしかしたら日本は、私たちが思っている以上に深刻なピンチにあるのかもしれません」  ここまで読むと、喜劇からまた悲劇に戻ってきます。  記者クラブのメンバーが中心で、一人一問、追加質問なし、という先進国ではありえない記者会見が、こんな状況を生むのだと思います。  マスコミがまとまって、この状況を拒否する日は来るのでしょうか。
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