スポーツ

東京五輪開催へ…前哨戦で明らかになった「有観客と無観客の違い」

コロナ禍に行われる五輪の意義

オリンピックシンボル

五大陸とその相互の結合、連帯を意味するオリンピックシンボル

 東京五輪・パラリンピックの開催を巡ってはさまざまな議論があります。否定的な意見も数多くあります。それでも、分断が加速するこういう時だからこそ、五輪・パラリンピックには役割があるはずです。分断とはまったく反対の、融和というチカラが五輪・パラリンピックにはあります。スポーツを通じて、世界をひとつにするチカラがあります。  世界には文化や言葉、思想が違うさまざまな国があり、今まさに対立している国同士もあります。そんななかでも、五輪・パラリンピックという舞台では、対立を一旦置いてスポーツを楽しむことができます。  今大会は参加を見送りましたが、北朝鮮のような国際的に孤立する国も参加しますし、平昌大会では韓国と南北合同チームを結成するという出来事もありました。イスラエルとパレスチナのような紛争の最中にある国同士も同じ大会に集います。アフガニスタン、南スーダン、シリアなど11ヶ国出身の選手たちによる難民選手団の参加も予定されています。  各国からの首脳も集い、本来なら話し合いのテーブルにつくこともないような国同士が、同じ舞台を共有するのです。国威発揚に利用されたり、テロの襲撃を受けたり、さまざまな痛ましい事件もありながら、それを乗り越えて五輪・パラリンピックひいてはスポーツのチカラが世界を前進させてきたというひとつの形でもあります。  これほど多くの国と地域が、ひとつのことに向かってみんなで一生懸命になる機会はそうそうありません。五輪・パラリンピックはその点において、世界最大級のチカラがあります。価値があります。

「スポーツのチカラ」の本質とは?

 オリンピック憲章の根本原則にある「オリンピズムの目的は、 人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てることである。」という一文は飾りではなく、そういう世界になるように願って歩んできた目標です。  言葉や文化や人種ではなく、全世界が同じルールのもと、速い者・高い者・強い者が純粋に讃えられる、公平な舞台だからこそできることです。北朝鮮は問答無用で負けです、などとはならないからこそ、対立を脇に置いて、同じ時間を過ごすことができる。  その舞台を目指すアスリートたちは、まさに人生を捧げています。彼らが「勝手に」やっていることではありますが、彼らが人生を捧げて身につけた技能や、重ねてきた努力や忍耐は、多くの人の心を打つものです。  日本でも東日本大震災のあと、なでしこジャパンや東北楽天ゴールデンイーグルス、羽生結弦選手などが、スポーツのチカラで、くじけそうな心に勇気と元気を引き起こしてくれました。  肉体を追い込み、怪我や、ときには生命の危険すら乗り越えて競技に取り組むアスリートたちは、「頑張る」ということの見本です。人間はこんなに頑張れる、頑張るとこんな奇跡のようなことが起きる、そういう実例を示してくれる先生たちです。
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2021年の五輪を開催する日本に課せられた責任
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