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「若者の5人に1人は朝の歯磨きをしない」コロナ禍で進行する歯周病の恐怖

歯周病の影響は口臭や歯のグラつきだけじゃない

歯周病

写真はイメージ

 では、歯周病になると炎症以外にもどのような症状があるのだろうか。思いつくのは口臭や歯のグラつきなのだが、小方氏は全身疾患にも関係していくと話す。 「歯周病の原因菌は、歯と歯肉の溝(ポケット)の奥で増えていく空気が嫌いな菌なんですよ。実験室では真空ポンプで引いて培養するんですけど、正直ものすごく臭いですね。今まで嗅いだことないレベルの匂いがします。これが口臭の原因です。それだけでなく、歯周病は糖尿病、心血管疾患、低体重児出生、アルツハイマー病、がんなど、様々な全身疾患のリスクを高めると言われています。  歯周病では、少し難しい言葉ですけど『炎症性サイトカイン』といって、歯肉の中で炎症を引き起こす物質が持続的にでてくるんです。それが血液にも入ってきて、全身を巡って悪さをしたりすることもあります」  たかが歯磨きと思っていると、痛い目どころか臭い目にもあう歯周病。一旦なってしまうとかなり厄介な“付き合い”をすることになるという。 「歯周病治療は歯周基本治療といって、歯間ブラシや歯ブラシの指導、歯石を取ったり……というところから始めます。歯ブラシの毛先を歯肉に当ててマッサージをすることで、歯肉の新陳代謝が活発になります。ただ歯周病の治療成果は患者さん自身の自然治癒力にかかっているので、来院間隔をあけて診ることが多く、毎日歯科医に通って1か月で治癒……なんてことはありません。1か月ほどスパンを開けて診察、治療を続けていくので、悪い人だと3年以上治療期間がかかることもあります」

インプラントと歯周病の怖い関係

 また、歯周炎で歯がダメになってもインプラントをすれば……と思っている方がいたら、少々考えを改めてもらいたい。インプラントした後の炎症(歯周炎に似た状態)は厄介極まりないものだという。 「最近問題になっているのはインプラント周囲炎という、インプラントの周りのプラークによる炎症です。インプラントはやる前の歯周病ケアが実はものすごく大事なんです。インプラントの隣の歯が歯周炎だったら、そこからまた菌が移ってしまい、ものすごくキツいインプラント周囲炎を引き起こしかねません。最悪、せっかく施術したインプラントを取り除かなければならないケースもあるのです」
インプラント周囲炎

インプラントした後に歯周病が起きてしまうインプラント周囲炎。最悪、インプラントした部分を取り除くことになるとも(写真提供/小方氏)

 歯が悪くなっても「インプラントすれば大丈夫!」といった考え方は、根本的に間違っているわけなのだ。まずは歯磨きで歯周病対策をすることが重要なのだとか。 若いうちから歯のケア、歯周病対策をしておかないと、40代、50代になったときに歯周病で苦しみ、命も削るという悲惨な結末が待っている。たった数分の歯磨きをするだけで、高額な治療を回避することもできるのだ。  コロナ禍で病院から足が遠ざかった方も多いだろう。だが小方氏は「なるべく年に1回以上」は検診に行くことをオススメしたい」という。なくなってからでは取り戻せない歯は、人間にとって欠かすことのできないパートナーである。ならば労りを忘れずに、毎日歯磨きをすることが大切なのである。
歯磨き

歯磨きをすることも大切だが、正しい歯磨きをすることも大切と小方氏

取材・文/セールス森田
Web編集者兼ライター。フリーライター・動画編集者を経て、現在は日刊SPA!編集・インタビュー記事の執筆を中心に活動中。全国各地の取材に出向くフットワークの軽さがセールスポイント
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