ダル、上原…MLB選手に軽んじられる日本メディア
「その仕事、俺にもできるぜ!」
今季初登板で完全試合未遂の快投を見せ、4月だけで5勝を挙げたダルビッシュが、シーズン開幕直前にツイッターで発した言葉だ。自身の状態について、不確かな情報をさも真実のように報じたある日本メディアを、痛快な「ダルビッシュ節」で皮肉った。(https://twitter.com/faridyu/status/316753572350009344)
日常的にツイッターを駆使するダルビッシュは、自身の言葉を発信する“今風アスリート”の代表格。自身の考えをハッキリ伝えるためには、他者への批判や苦言も厭わない。アスリートとしては群を抜く87万人のフォロワーを有する。
特に一部マスメディアに対しては、そのいい加減な報道内容に憤りを感じることが多いようで、日本ハム時代から容赦ない批判を繰り返している。
さらに最近は、ダルビッシュのみならずMLBで活躍する多くの日本人選手たちの「マスメディア批判」が目立つようになってきた。
開幕ローテーションを勝ち取り、2勝1敗、防御率1.67と好調なマリナーズ岩隈久志は、3月19日付ブログ(http://ameblo.jp/hisashi-iwakuma/entry-11494082501.html)で、WBC日本代表の敗退について言及。その中で、岩隈ら米国でプレーする4人の元代表選手が、日本代表の決起集会を訪問した際に「元気がない。アメリカに来ただけで満足?」と声を揃えて発言したとする報道について「耳を疑うような一部報道を知り、残念でなりませんでした」と綴った。
メジャー3球団目となるレッドソックスに移籍し、今やメジャーの風格十分の上原浩治も、ダルビッシュに負けず劣らずマスコミ批判を展開した。
WBC期間中、当初はエースと目されていた田中将大(楽天)が、大会途中からリリーフに回った際、「中継ぎ降格」と表現した活字メディアに対して上原が「中継ぎをバカにするなよ。野球を知らない奴が、記事を書くなって思うのは俺だけ??」とツイッターで大激怒。過酷な環境の中、MLBのリリーバーとして確固たる地位を築いた上原の重みある金言が、ネット上で拡散した。(https://twitter.com/TeamUehara/status/308712490844430336)
一方、良質な記事は選手自らが進んで紹介することも。
スポーツライター広尾晃さんが運営しているブログ『野球の記録で話したい』は、月間70万PVを誇る大人気ブログ。広尾さんはプロの野球記者ではないブロガーだが、詳細なデータ分析に基づくユニークな考察と、歯に衣着せぬ痛快な論評が多くの野球ファンから支持されている。
昨年10月、広尾さんは自身のブログで、上原の今季の成績がいかに驚異的であるかを独自のデータを交えて紹介した(http://baseballstats2011.jp/archives/19186613.html)。記事は瞬く間にネット上で拡散されると、やがて記事を読んだ上原本人が、ツイッターで自らその記事を紹介したのだ。(https://twitter.com/TeamUehara/status/263299319963209728)
アスリート自らが、ツイッター、フェイスブック、ブログなどの個人メディアを持ち、ファンと直接コミュニケーションを図る今のご時世。プロ・アマ問わず、いい加減な情報は容赦なく叩かれ、そして逆もまた然り。情報のソーシャル化が進み、質の悪いコンテンツは淘汰され、質の良いものが残る仕組みができた。
ジャーナリズムの3原則は「広報」、「啓蒙」、「批評・批判」。これまではスポーツと癒着気味だった、スポーツジャーナリズムの独立が望まれるなか、現場のアスリートたち――ソーシャルメディアを手にした新時代のアスリートたち――は、ひと足早く、批評・批判の原則に気付いているのかもしれない。
<取材・文/スポーツカルチャー研究所>
http://www.facebook.com/SportsCultureLab
海外スポーツに精通したライターによる、メディアコンテンツ制作ユニット。スポーツが持つ多様な魅力(=ダイバーシティ)を発信し、多様なライフスタイルを促進させる。日刊SPA!ではMLBの速報記事を中心に担当


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