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佐村河内氏に見る「出版界と音楽業界のゴーストの違い」

― 木村和久の「オヤ充のススメ」その6 ―


ゴーストライター

出版界にも存在するゴーストライター。なぜ音楽業界では悪いのか?

 笑っていいとも最終回、ビートたけしの表彰状の中で「これはゴーストライターが書いたもので」と、いじられまくっていた佐村河内さん。若手芸人から見たら「オイシすぎる!」と羨望の声が聞こえてきそうだ。何しろ最後のテレフォンショッキングも佐村河内さんが新垣さんと電話出演する(?)というボケで終わったしね。

 本人がもし、いいともを見ていたら、どんな心境だったろうか。姿を現さないのに、この人気、まさにゴーストタレント化しているんだから、恐れ入ります。テレビ局からギャラもらって、いいとも~だね。

 下火になっていたゴースト問題だが、表彰状のおかげで、我々は彼を再び思い出してしまった。

 そう言えば、ビートたけし繋がりで思い出したが、ツービートが復活したらしい。ビートきよしが、あんまり貧乏だから、ビートたけしが救いの手を差し伸べて、コンビ復活なそうだ。なんでこの話題に無茶振りするか? そうなんです、実は私、ツービートのゴーストライターを過去にやっておりました。しかも、ビートきよしのほう。

 そんなわけで、今回は元ゴーストライターの先輩として、佐村河内ゴースト問題を取り上げ、音楽界と出版界の違いを考えてみます。

 まず私がやったゴーストなんだけど、2冊ある。1冊は社会派カメラマンのエッセイで、これは書きなぐった本人の原稿がすでにあった。分量は多いが、完全な文章でなく、素人が思ったことを書いただけの内容だった。

 そこで「ゴーストして」と頼まれたわけだが、厳密には「リライト」ということで、確か印税はもらえずに買い取りだった。

 新人ライターが、特に単行本の出版社と仕事をするときに、腕試しでこういうリライトはよく頼まれる。単行本はマラソンと同じで、長い分量をさぼらずに納期まで仕上げられるかどうかの、根気と体力を試されるのだ。

 そして、いよいよ1983年、本格的なゴーストだが、相手はなんと人気絶頂の「ツービート」。こりゃイケると思うでしょう。

 当時ってツービートの本が、高田文夫さん一派によって構成され、ミリオンセラーを連発していた。じゃあ、ビートきよしもいけるんじゃないかって、企画を出したらすんなり通って、きよしさんに焼き肉オゴってもらいながら、上野の自宅まで行って、いろいろお話を伺いましたよ。

 当時はコンビ全盛だったから、すげえバブルだった。ビートきよしですらジャガーに乗って、高級焼き肉店でばっかり会っていた。しばらくつきっきりでいたんだが、あまり喋らない人でしょ、頷きトリオをやっていたくらいだから。そこで、多くはこっちでネタを作って書かざるを得ないとなったわけ。タイトルは「ビートきよしの逆転満塁ホームラン」って本で、すでにタイトル段階で人生負けてる感がひしひし漂ってきますね。

 1983年といえば、今から31年前、こっちはまだ大学生だったから、よくまあ学生ライターにそんな企画を通したと思うよ。当時の出版社も太っ腹ですな。

 当時のゴースト状況を語ると、矢沢永吉の「成り上がり」のインタビューと構成が糸井重里という時代で、ゴーストライターは花形だった。むしろ、登竜門的扱いだったかもしれない。しかもタレント本だから、そりゃゴーストライターがいて当たり前の世界。なんら戸惑いも違和感もない。

 ちなみに契約は、ちゃんと印税契約をさせてもらった。契約上の著者はビートきよし、こっちは「著作権者」という扱いを受けて、ちゃんと出版契約書にハンコを押す。堂々たるもんです。確か、本のクレジットにも構成で名前入れをさせてもらったはずだし。だから、なんらやましいとは思ってない。

 出版界においては、ちゃんと出版契約書のもと、ゴーストライターは経済的に保証されているし、システム化されているし、社会的にも認められている。

 じゃあ、音楽界はどうなのか。まさか新垣さんがレコード会社立ち会いのもと、ゴーストライターとして契約書にハンコを押したとは思えない。つまり、新垣さんは、佐村河内さんの完全な下請け、その存在すら知られてなかったのだ。

 もちろん出版界においても、漫画原作者とか、有名作家でも内弟子みたいな人が、手伝うことはある。その手伝いの比率や内容は、おのおの個人差がある。要するに、誰がゴーストにカネを払うかで、その主従関係、契約関係がわかるのだ。

 佐村河内さんも、新垣さんとユニットでやっていますと、双方合意の上で言ってしまえば問題なかったが、それを新垣さんは許さなかった。

 致命的なのは佐村河内さんのドキュメンタリーで、ろうそく部屋で頭を壁にガンガンぶつけて作曲しているフリ、産みの苦しみを演出してしまったことだ。これで100%佐村河内さんが作っていると宣言したようなものだから。

木村和久

木村和久

 字を書く人と、曲を作る人は、決定的に違うことがある。ぶっちゃけて言えば、字は誰でも書ける。だから、四方八方から誰かが関与してるなと思われても仕方ないフシがある。けど、作曲は違う。特にクラシックは。アレンジでいかようにもなるポップスと違い、まさに神の啓示を受けた、ひと握りの才能溢れる人間のみが作り得る行為なのだ。

 特に一般の人は頑にそう信じている。それを裏切った行為として映るから、みんな怒っているのだ。

 やはり今後は、ゴーストタレントとして、ネタで登場していただきましょう。ついでにテレビ局からギャラいただきますか。ジャスラックみたいに1ネタいくらとかさ。なんか募金みたいですね。

■木村和久(きむらかずひさ)■
トレンドを読み解くコラムニストとして数々のベストセラーを上梓。ゴルフやキャバクラにも通じる、大人の遊び人。現在は日本株を中心としたデイトレードにも挑戦

<Photo by flicker of Gerwin Sturm>

トレンドを読み解くコラムニストとして数々のベストセラーを上梓。ゴルフやキャバクラにも通じる、大人の遊び人。現在は日本株を中心としたデイトレードにも挑戦。著書に『50歳からのかろやか人生』





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