偏差値48から東大に合格したロリータ娘の管理術
―[ロリータ東大生]―
ロリータファッションに身を包んだ東大大学院生・大石蘭さんが描いたコミックエッセイ『妄想娘、東大をめざす』がジワジワと注目されている。一見、サラリーマンには関係ないように思える同書だが、読んでみると意外に共感できたり、参考になったり、熱くなったりするところも。先入観を取っ払って、一度手に取ってみてはどうだろう。
――本書を執筆したきっかけは?
大石:もともとは、私が10代のころから愛読していた雑誌『spoon.(スプーン)』に寄稿したことがきっかけです。2013年4月号の「ロリータと装甲」という特集に、私の東大受験の話を絡めた原稿――12ページで1万文字くらいだったかな――が掲載されて、けっこう反響をいただいたんですね。
本書の編集・プロデュースをしてくださった石黒謙吾さんに、先の特集記事を読んでいただいて「面白い! この話、いつか本にしたいね」という話になり、最終的に本書のような形で結実した、という感じです。
スプーンの編集長や石黒さんと知り合ったのは、荻窪にある「6次元」というちょっと個性的な書店です。そこによく出入りしていくなかで店主の方と親しくなり、私が小説などを書いている話をしたら、「作品があるなら持ってきなよ」と言ってくださって、いろいろな方を紹介してくれました。お仕事として文章やコミックエッセイを執筆できるようになったのは、ご縁に恵まれたおかげ。幸運だったと思います。
――本書はコミックエッセイの体裁ですが、もとは文章だったワケですね。
大石:というか、文章しか書けないと思っていたんですよ。イラストは描いていましたが、あくまでも趣味のレベルだと思っていたので。小説は、高校のころから書いていたし、東大でも文芸サークルに入ったりして、4年で20作くらい書いてきました。だから、最初は小説を考えていたのですが、本書を担当してくれた幻冬舎の編集さんから「いまは小説がなかなか売れないし、絵が描けるならコミックエッセイなんてどう?」とアドバイスされて。石黒さんからも「小説はいつでも書けるよ。今回は、コミックエッセイで頑張ってみよう」なんてお話があり、チャレンジしてみようかなと。
――これまでマンガを描いた経験は?
大石:実はありません。だからもう、イチから勉強でしたね。一枚絵のイラストはたくさん描いてきましたけど、マンガとなると、また話は違うので。ご指導いただきながら、どうにか描き上げた感じです。でも、挑戦してみてよかったですね。「コミックエッセイみたいな体裁って、私、意外と向いているのかな」とうぬぼれてみたり(笑)。一方で、ガッツリと文章で読ませるような作品もやってみたい気持ちは強くなりましたが。
――たとえば「小説を書きたい」「表現する仕事に就きたい」と、かけ声だけは威勢がいいけど、結局なにもしない人は少なくありません。いざやろうとすると、面倒だったりするじゃないですか。
大石:私、絵を描いたり、文章を書いたりすることは億劫じゃないんです。それに「やりたい!」と本気で思うなら、やればいいだけのこと。もちろん、ときには面倒に思うこともありますよ。「今日は眠いし、原稿書きイヤだな」とウダウダしたり。
ただ、これは東大受験のときもそうでしたけど、自分の好きなこと、自分の進みたい道に取り組むのであれば、本当に初歩の初歩、スタート地点から真面目に始めないと、なにも動かないなと。偏差値48から東大を目指したくらいなので(笑)、本気で何かに取り組むなら、一度、自分を落とすだけ落として、メチャメチャ低いところから立ち上がっていかないと、なかなかうまくいかない……みたいな感覚は強いです。そういう意味では、ストイックかもしれません。
あとは、自分の手を動かしていないと不安になる、性格的なこともあると思います。というか、何事も可視化しないと消化できないんですよね。
――可視化ですか?
大石:ええ。たぶん、アタマのなかがすごくアナログなんだと思います。予定を立てるにしても、手帳に細かく書き込んでいかないと、自分がどう行動すればいいのかわからなくなるんですよ。暗算みたいにアタマのなかだけで処理できないから、いちいち手を動かして形に残し、可視化しないと不安というか。手帳なんて、ホントに書き込みでビッチリです。お金の計算も苦手だから、ぜんぶ手帳に書き出しているくらい。
――ビジネス誌などで語られる手帳活用の極意みたいですね。「どんなに細かいことでも、すべての予定を書き出せ」「スケジュールは手書きで管理せよ」みたいな。
大石:そうなんですか? でも、手書きはすごくいいですよ。自分の身体でスケジュールを消化している感じがして。カレンダーアプリといったデジタルツールを使っても可視化はできますけど、手書きするほうがより肉体的な気がするんです。
大学受験のころから、スケジュールをずっと手書きしてきました。予定を書き出して、こなせたら線を引いて消していくのが気持ちいい。自分がどれだけ進めたのか目に見えるから、なんだか嬉しくなるんですよ。
⇒【中編】「ロリータ東大生の時間管理術とは?」に続くhttps://nikkan-spa.jp/632564 <取材・文/漆原直行> 【大石蘭】 1990年福岡県生まれ。東京大学教養学部卒。現在、東京大学大学院修士過程(比較文学比較文化を専攻)在学中。雑誌『Spoon.』に掲載された自伝的短編「そんなお洋服ばっかり着ていると、バカに見えるよ」が注目を集め、同誌や『PHP Special』『mille』などでエッセイ、イラスト、コラム、レビューを執筆するように。2014年3月、初めての著書となる『妄想娘、東大をめざす』を上梓。少女文化と原宿、スイーツをこよなく愛する。憧れの女性は椎名林檎、蜷川実花、よしもとばなな。いつか彼女たちに逢いたいと妄想しつつ奮闘中。
―[ロリータ東大生]―
|
『妄想娘、東大をめざす』 普通の女子高生の泣き笑い東大受験奮闘記 ![]() |
【関連キーワードから記事を探す】
元SKE48・高柳明音「集大成ではなく“はじまりの一冊”」3rd写真集『あかねのそら』から始まる20周年に向けた夢
SKE48・熊崎晴香「全員が主役」12人選抜で見えたメンバーそれぞれの可能性
「急な出張」を理由に休んだPTA役員の“ズル休み”を目撃。スマホで隠し撮りをして本人に問い詰めた結果…
ママ友に“利用され続けた”30代女性。会計時に店員が言った「スッキリする一言」で縁を切ることができたワケ
上場企業を売却して得た20億円を“わずか2年で失った”ギャンブル中毒。「一度きりの人生、リスクを取って行動を起こしてみろ」
あったはずない「昭和」にハマる人続出!呂布カルマ、宇多丸も絶賛「架空昭和史」ってなんだ
「嫌な思い出も笑えるように描けば救われる」訪問販売の経験を漫画にした理由
ホラーがヒットしないのは「経済的にしんどいし現実が苦しい」のが原因!?<劇画狼×崇山祟対談>
真のニート漫画…/新・アラだらけ君〈第8話〉
最強家族と出会った「葛飾区お花茶屋」の夜/清野とおる×パリッコ
フリーランスの王・株本祐己「フリーランスが活躍できる社会にしたい」。“フリーランス集団”というまったく新しい組織の形
体育会系人材は時代遅れになるか? AI時代に求められるアスリート人材の力
世の中には「善い人」「自分だけがイイ人」「カモ」の3種類がいる…投資家が“目指すべき姿”と理由
YouTuberヒカルのパートナーでYouTube業界の仕掛け人「1円を大切にするビジネスの基本は食品業界から学んだ」
医学部在学中に年商1.5億円。令和の虎・青笹社長が医師の道を捨て、「動画編集教育ビジネス」を選んだワケ
この記者は、他にもこんな記事を書いています