服屋の店員の「お似合いですよ」は信用できる?
―[メンズファッションバイヤーMB]―
メンズファッションのバイヤーMBです。洋服の買いつけという本業の傍ら、ブログやメルマガで「オシャレの正解」について発信していたところ、こちらで執筆させていただくことになりました。連載第17回目をよろしくお願いします。
「服を買いに行きたいけど、接客がウザいんだよな~」。そんなふうに思ったことはないでしょうか。買い物につきものなのがショップ店員の接客。「お似合いですよ!」「最後の一点なんですよ!」……そんな嘘か真か怪しい「殺し文句」を操るショップ店員に心を許せないという人も多いでしょう。今回、私の周りのショップ店員に取材し、「ショップスタッフの定型句」の真偽を暴きたいと思います。
▼定型句その1「お似合いですよ~!」
「そんなバレバレの嘘はつかない」「本当に似合ってないときは嘘でも言えない」というのが大半の意見でした。決まりきった「殺し文句」のようですが、どうやらコレは本音。そりゃそうですね、誰が聞いてもお世辞にしか聞こえない言葉なんてわざわざ選びません。後述するもっと高度な「殺し文句」があるので、これは素直に受け取ってもOKのようです。しかし、レディース服のショップ店員の場合は別。女性は脊髄反射的に「きゃー! お似合いですよ!」と言うスタッフが多いのも事実。ヒドイときだと試着室のカーテンを開けている最中に「きゃー! すごいかわいい~!」なんてことも。……見えてないでしょ(笑)。
▼定型句その2「あと1点しかないんです」
「これは本当。だってお店に戻ってきたら嘘だってバレるし」「どこのお店も在庫はカツカツ。ラスト1点の商品ってのは、そんなに特別なものじゃない」。ショップスタッフさんといえば「ラスト1点なんですよ~」という売り文句で買わせるイメージですが、これも実は本当のことが多い。洋服屋がもっとも嫌がる経営的なリスクは「在庫過多」です。洋服は「生地屋」「縫製工場」「ブランド」「小売店」と複数社がかかわって作り上げるものなのでもともとの利益率が非常に低いビジネス。業態にもよりますが、10点入荷した 商品があるなら6点以上販売しないとその商品単体では赤字です。死活問題にもつながるため在庫は基本的にタイトで、再入荷があるかどうかは別として「ラスト1点」というのはそんなに珍しい話ではないのです。なので「あと1点しかない」という言葉は意外にも事実であることが多いのです。
▼定型句その3「どちらがお好みですか?」
「これを無意識にやっている販売員は多いけど効果絶大」「お客様が一つ見てたら、必ず似たような商品をもう一つ持っていって選んでもらいます」。これは「ダブルバインド」といって相手に断られないセールステクニックの一つとして非常に有名なもの。要するに「NO」と言わせない会話術です。たとえば、「これ買いますか?」「これカッコイイですよね?」という問いかけに対しては「要りません」「いや別に」など「NO」という回答が可能です。しかし、「どちらの色がいいですか?」「どちらの商品がいいですか?」という問いかけに対しては、「え?……こっちの色かな」「まあ、こっちの服が好きですね」などいずれかの選択を選ぶことしかできなくなり、「NO」という回答がなくなります。これ、ある程度、販売や営業の経験がある方なら誰しもが実践していること。「どちらの商品が好みですか?」「どちらの色が好みですか?」「サイズはどちらがいいですか?」「じゃあこれで決まりですね!」とあれよあれよと購入まで持っていかれます。ですから、接客されたときには要注意。「いや、もうちょっと色々見させてください」とはっきり言いましょう。
▼得する言葉その1 「取り寄せしてもらえますか?」
では、逆にショップ店員に「コレを言ったら得をする!」という言葉を紹介していきましょう。賢く買い物するためにぜひご活用ください。
たとえば、Mサイズが欲しくてもSサイズしかお店になかった場合に、ショップ店員は「いやいや、Sでもイケちゃいますよ!」「着ていくと伸びますから!」と、言われることがあります。ショップ店員はその日の売上が欲しいわけですから、あまり積極的に「お取り寄せしましょうか?」とは言いません。ですから、こちらから遠慮なく、「Mサイズ取り寄せってできますか?」と聞く。サイズで妥協すると後々後悔が残ります。そこで「できません」「他店に在庫がなくて」と言われたらスッパリ諦めるのがオススメです。
▼得する言葉その2 「お直しできますか?」
どのサイズを着ても微妙に着丈が長い、袖が長いなど。部分的にサイズがちょっと気に入らないときは、「お直し」というサイズ調整が可能です。「袖が長いので、お直しできますか?」「着丈が長いので、短く直せますか?」など遠慮なく相談しましょう。「お直し」とは実際に洋服にハサミを入れて修正することですが、業者に委託しているケースが多く、ショップ店員も専門外なため、あまり自分から提案しません。こちらから相談すると「できると思います。業者さんに相談してみますね」と対応してくれます。また「持ち帰って自分で業者に出せばいいや」と思うかもしれませんが、洋服屋と契約している業者はお直し料金が格安設定の場合がほとんどです。自分で出すよりも圧倒的にお得な場合が多いので活用しましょう。また、「お直しができたら自宅に配送できますか?」と聞くのもオススメ。近場なら意外と無料で送ってくれるお店もあります。
▼得する言葉その3 「次はどんなものが入ってきますか?」
しつこい接客から逃げるための便利な口上です。「これもいいんですけど、次はどんなものが入ってきますか?」と聞けば、積極的に次回入荷の案内をしてくるはず。そうしたら「じゃあこれが入荷した頃にまた来ます」とあっさり逃げることができます。ショップ店員としても「今日買ってもらえなくても、次回があるならいいか!」と諦めもつくもの。……まあそんなに気にせずともサラッと帰ってしまえばいいのですが、「なんとなく店員さんに悪いな」と思ってしまう方は相手を傷つけずに帰ることができるのでオススメです。ただ、次回行くと「入荷しましたよ!」とキツめの接客を受けることになるかもしれませんが……。
ショップ店員も中にはとても親身になってくれて、色々と取り計らってくれる方も多いです。売りつけてくる人ばかりではありません。心なくその日の売上だけを求めるような、ひどい接客ばかりが目につくショップ店員には、これらのキーポイントを抑えて、賢い買い物ができるように心がけましょう! <取材・文/MB>ファッションバイヤー。最新刊『MBの偏愛ブランド図鑑』のほか、『最速でおしゃれに見せる方法 <実践編>』『最速でおしゃれに見せる方法』『幸服論――人生は服で簡単に変えられる』など関連書籍が累計200万部を突破。ブログ「Knower Mag現役メンズバイヤーが伝えるオシャレになる方法」、ユーチューブ「MBチャンネル」も話題に。年間の被服費は1000万円超! (Twitterアカウント:@MBKnowerMag)『MBの偏愛ブランド図鑑』 今着るべきブランド60の歴史や特色を、自身が愛用する品とともに徹底紹介 |
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