札幌地検の検事が痴漢逮捕。被害女性「私のお尻を追いかけて触り続けた」
今月8日、電車内で25歳の女性の尻を触ったとして、神奈川県警大船署は、県迷惑行為防止条例違反(痴漢)の容疑で、札幌地検の検事(28歳)を現行犯逮捕した。
逮捕されたのが現役の検事だったことから、法を司る者のスキャンダルとして本事件には高い注目が集まった。だが、そうしたモラルをめぐる議論の前に、痴漢被害を受けた女性がいるという忘れてはならない事実がある。
現役の検事はなぜ痴漢容疑で逮捕されたのか。今回、取材班はこの事件の被害に遭った女性に話を聞いた。既報されているだけではわからない当時の状況を詳らかにしていこう。
◆目覚めたときに気づいた違和感
――痴漢に気づいたのはいつだったのでしょうか
その日は飲み会の帰りで、京浜東北線で大田区の自宅へ帰る途中でした。いつもはあまり電車で寝ないのですが、酒が入っていたこともあり車内で座りながら爆睡してて。記憶があるのは上野駅までで、それから目覚めるまでは記憶がありません。目が覚めたときに違和感を覚えました。違和感の正体はすぐにわかりました。右横に座った男性の手が私のお尻を触っていたんです。
――それで痴漢だ、と気づいたんですね
いえ。最初に「痴漢かな?」って思ったんですが、私の勘違いかもしれないので、私のお尻と密着している男性の左手との距離をどかさせるように席を浅く座り直したんです。でも、彼は私のお尻を追いかけて触り続けている。「寝ぼけているのかな?」と思ってちらっと横を見たところ、起きていたんですね。
いまの私の動きに気づいたのか、彼はうつむいている私の顔を覗きこんできたんです。たぶん、そのとき私が目覚めたことに初めて気づいたのかもしれない。それでもう触るのはやめるのかと思ったんですが、浅く座りなおしてもやっぱりまだ触ってきました。
そこで「間違いない、痴漢だ」って思いました。
電車はちょうど大船駅に到着する前。車内の席の埋まり具合は3割ぐらいで座席は十分に空いていました。
◆「この人痴漢です」と叫んだ
――どのようにして捕まえた?
覚悟を決め、男性の左手首を握り、その場で「痴漢です」と言いました。私の左側の座席にいた男性が立ち上がって、犯人の前に立って逃げないように腕を掴んだ。それで110番通報をしてくれて。
30秒ほどで電車は大船駅に着き、私と、痴漢の犯人を取り押さえた男性と一緒に電車を降りました。すぐにホームで待機していた駅員さんたちと駅員室に入って。ここ以降、犯人とは離れることになりました。
――事情聴取が始まった?
はい。詳しい内容は話せませんが、すべて終わったのは朝の5時半くらいで。およそ5時間にわたって一睡もできませんでした。聞いた話では、犯人はもともとロングシート席で私の向かい側に座っていたらしいんです。それが、終点・大船駅のひと駅前の本郷台駅あたりで私の隣へ移動したそうなんです。
その理由はわかりませんが、犯人が私の隣に座ったことで痴漢できる状況になったことは間違いありません。
◆被害女性が語る痴漢事件の問題点
――本事件で印象に残ったことは?
実は、以前も朝の通勤時に痴漢を捕まえたことがあるんです。でも、そのときの警察の方はあまり取り合ってくれなかったんです。警察の人曰く、被害届を出せるのは被害に遭ったその時点のみ。でも、朝の出勤前の時間帯だったので事情聴取の時間を取ることができなかったんです。
なんとか仕事終わりの夕方に改めて話させてもらえないかと提案したのですが、被害に遭ったすぐ後でなければ取り合えないと断られてしまって。
さらに、このまま話を進めたら裁判になったときに面倒なことになるとも言われました。まるで被害届を出さないほうがよいと言っているような口ぶりで……。結局、その時は犯人に対する厳重注意だけに終わってしまったんです。でも、今回はしっかり警察の方が対応してくれました。
――痴漢の多い朝の時間帯に被害届を出しにくい、と?
そう思います。朝の通勤時間帯は電車が混みあうので痴漢が多く発生するはずです。にもかかわらず、被害女性がその場で事情徴収に答えられないばかりに犯人を厳重注意だけで終わらせ逃してしまう。これは現在の痴漢を取り巻く大きな問題だと感じます。
◆少なくない「座り痴漢」
――細かい問題点はほかにもありそうですね
また、痴漢というと、満員電車の中で立っている乗客が被害に遭うケースを想像しがちですが、座っているときに痴漢被害に遭うケースも少なくありません。私自身、これまで何度かシートに座っているときに隣に座っている男性から痴漢されたことがありました。
さまざまな痴漢の手口を知っておくことで、監視の目を光らせやすくなると思うんです。痴漢は立ってされるだけのものではないことは強調しておきたいですね。
むろん、本事件は進行中のものであり、彼女の証言が真実の全てだとは言い切れない。
しかしながら、我が国においてこうした痴漢被害がいまだに絶えないことは紛れもない事実だ。今回、現役検事が痴漢容疑で逮捕されたニュースが、今後の痴漢被害防止のために何らかの新たな対策が打たれる契機になることを願いたい。 <取材・文/日刊SPA!取材班>


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