楽天前監督・デーブ大久保、苦渋の1年を語る
昨季限りで勇退した星野仙一氏(現・楽天球団取締役副会長)に代わって東北楽天ゴールデンイーグルスの5代目指揮官に就任した“デーブ”こと大久保博元前監督だったが、終わってみればパ・リーグ全5球団に負け越し。5位オリックスに3・5ゲーム差をつけられての最下位(57勝83敗3分け)に沈み、わずか1年での退任となった。
「正直、監督という立場上、常に強気のポーズを取ってきたので心身ともに疲れています。コーチ、二軍監督時代を含め、楽天には4年間お世話になりましたけど、特に今季は、世間にいろいろ騒がれながらも、やせ我慢しながらやってきたのがホンネ。まあ、いろいろ考えながら戦ってきましたが、それが失敗したから6位という結果になったということです」
銀次、嶋基宏、藤田一也ら主力の相次ぐ負傷に加え、期待された外国人野手の不振など戦力が整わなかったことが、最下位に終わった主な原因だったことは間違いない。だが、7月末には田代富雄打撃コーチが電撃辞任するなど混迷した。田代氏の辞任は、表向きは打撃不振の責任を取ったとされるが、メディアでは“三木谷浩史球団オーナーの現場への介入に不満が溜まったことが最大の理由”ともされ、そのことがチームに与えた影響も少なくはなかったはずだ。事実、田代コーチ退任後の楽天は借金をそれまでの9から17に増やしている。
◆負のイメージが増幅される「悪循環」に陥った楽天
「たとえば書類送検と聞くと随分悪いことのように思われますが、実際は交通違反でも書類送検はされているんです。だから、“介入”って表現になると、悪いイメージに受け取られてしまう。楽天にはチーム戦略室というのがあってコーチ時代にもフロントの言葉に耳を傾けながら物事を決めてきました。三木谷会長の意見を反映したことが“介入”という言葉で大げさに世の中に出てしまいましたが、僕自身は受け入れていました。もちろんメディアに大きく取り上げられたことで、その後は指揮を執るのが難しくなったのは事実です。ただ誤解を恐れずに言えば、どの球団も似たようなことをやっているんじゃないかなって思うんです」
ただ、今季の楽天のチームスローガンは「一致団結」だったものの、外からはそうは見えなかった。
「現場やフロントを含め、球団が一丸とならなければ勝てないのに、バラバラに見えたんでしょうね。うまく舵を取れなかった責任は感じています。もちろん、負け方は去年と同じだったわけで、編成の問題もあったとは思いますが……」
9月22日、CS進出が消滅した時点で、辞任を正式に表明。最下位に終わったとはいえ、もともと引き継いだチームが最下位だっただけに、誰が指揮を執ったところで難しい状況に変わりはなかったようにも思える。
「正直、1年じゃ足りなかった。しかし、1年契約を提示された限りはそこでAクラスに入れなければ責任を取るつもりでした。三木谷会長が叩かれていたことも申し訳ない気持ちでいっぱいでしたし、僕が辞めることでケツを拭けるならそれがいちばんですから。来年は大久保から監督が代わって、楽天が強くなったと言われればそれでいい。まぁ、正直な気持ち、『バッティングコーチをやれ』と言われたら喜んで戻りますけどね(笑)」
⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=965300 (ベンチ裏で握りしめて苦楽をともにした相棒、愛用のシガレットケースとライターには「我慢する木に花は咲く」との文字が刻まれている)
昨年、大久保新監督が誕生した際には、たとえば星野氏のような厳格なタイプの指揮官ではなく、親しみのあるニュータイプの指揮官としての期待もあった。だが、実は楽天からはそうした姿勢は求められていなかったとも話す。
「球団からはデーブ大久保ではなく大久保博元として威厳ある態度を取ってほしいと言われていました。『デーブ』という呼び方ひとつでも考えてほしいと。でも、内心ではDeNAの中畑(清)監督を見て、めちゃめちゃうらやましいと思っていました。僕はどちらかと言えば、あのタイプ。言いたいことを言ってしまうから敵が増えるのもわかっているんです。ただ、そろそろ皆さんに好かれたいと思いながら監督をやっていたらクビになりました(笑)」
チームとして結果は出なかったが、たとえば自ら抑えに転向させた高卒2年目の松井裕樹が球団新記録となる33セーブを挙げるなどの収穫もあった。
「転向には反対する声は多かったんです。でも、追い込まれれば追い込まれるほど力を発揮するタイプの松井は、先発で長いイニングを投げるより、絶対に抑えの適性があると思ったんです。侍ジャパンにも抑えで選出されましたが、あいつは緊張と無縁ですから大舞台でもやってくれますよ」
※このインタビューは週刊SPA!10月27日号の特集「プロ野球“一敗地に塗れた”男たち」から一部抜粋したものです
【大久保博元/おおくぼ ひろもと】
’67年、茨城県生まれ。水戸商から豪打の捕手として’85年ドラフト1位で西武入団。’92年、巨人へトレード移籍。’95年、現役引退。引退後はタレント、プロゴルファー、解説者等を経て’08年、西武一軍打撃コーチに就任。’12年楽天一軍打撃コーチ、’13年、二軍監督を経て’14年10月、一軍監督に就任。しかし、’15年10月、成績低迷の責任を取りわずか1年で退任
<取材・文/栗原正夫 撮影/ヤナガワゴー!>

- 「大好きなバイクで全国の温泉を回りたい」
- 「一度も行けなかった秋保温泉に行きたい」。監督時代、安全のため趣味のバイクは封印。「やっぱり風を切るのは気持ちいい」
- ベンチ裏で握りしめて苦楽をともにした相棒、愛用のシガレットケースとライターには「我慢する木に花は咲く」との文字が刻まれている。
- 就任当初の昨年11月には、本誌に目指すべき野球、理想の監督論、そしてなぜ自分が嫌われるのかを赤裸々に語ってくれた(’14年12月16日号)
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