国家が“生き方を管理する”監視社会が待っている
一昨年のタバコ増税に続き、喫煙率を今後10年で12%にするという計画が閣議決定された。非喫煙者にとっては喜ばしいこともしれないが、この流れが禁酒や禁ファストフードにまで波及するとなれば話は別だ。そして、今、日本は確実にその方向に進みつつある
◆個人の生き方を国家が管理する、自由のない監視社会が待っている
10年以上前から、年々厳しさを増す喫煙規制を“禁煙ファシズム”と呼んで警鐘を鳴らしてきたジャーナリストの斎藤貴男氏は、「私自身はタバコは大嫌い」だと言う。
「高校生の頃、『タバコを吸わなきゃ男じゃない』かのような風潮で、皆むせるのを我慢しながら吸っていた。おいしくて吸うわけではなく『みんなが吸うから吸う』なら、そこに自分の意思はない。それが嫌で、私はタバコを吸わなかった。しかし今、“時代の流れ”とか“お上が言うから”と、多くの人がタバコを排除している。ここにもまた自分の意思はない。国がさまざまなものを規制したがるのも、企業が生産性や人事・労務管理の一環として喫煙を規制するのも、当然です。管理する側というのは、そういうもの。私はむしろ、それに漫然と従う人々のほうに嫌悪感を抱きます。特にタバコをやめた人たちが、自分は何でも知っているかのような顔をして喫煙者を見下す。国の規制だけではなく、一般の人々が他人の生き方に介入する風潮こそがファシズムでしょう」
規制のターゲットが酒やファストフードにまで波及しそうな勢いだが、その先にあるのは自由のない監視社会だ。
「本来は個々人の生き方の問題である健康に国家が介入してくるなら、その流れの先にあるのは、健康以外も含めて国家が国民の生き方を管理する社会です」(斎藤氏)
一方、作家で医師の米山公啓氏は、「健康推進のためにメディア規制は必要」とする一方で、国民に対する過度な規制は本末転倒だと指摘する。
「有害性に関する情報とのバランスを欠いている点で、メディア規制は必要でしょう。酒やタバコの害についての啓発活動は、まだまだ足りない。しかし個々人の行動を規制しすぎれば、結局は酒やタバコが裏社会のマーケットとなってしまい、かえって規制しにくくなるでしょう。また、酒やタバコを規制する側は、医療費削減を口にしますが、これは完全な間違いです。酒やタバコを規制しないほうが寿命は短くなり、医療費削減になるはず。規制して国民を長生きさせれば、医療費や社会保障費はむしろ膨らみます。もしそうならないように規制するとしたら、個々の飲酒者や喫煙者の生活習慣を詳細に監視し、彼らの医療費負担だけを引き上げるといった受益者負担システムの徹底しかないでしょう」
いずれにせよ、やはり行き着く先は監視社会だ。SNSやスマホの普及でネット上はすでに相互監視社会になりつつあるが、日本も今後、こうした動きと健康ファシズムが連動したイヤ~な世の中になるのかもしれない。
【米山公啓氏】
’52年、山梨県生まれ。聖マリアンナ医科大学でニコチンガムを使った禁煙教室を実施。’98年以降、医療実用書のほか医療ミステリーの執筆を手がける。現在、米山医院に勤務
【斎藤貴男氏】
’58年、東京都生まれ。日本工業新聞記者、『週刊文春』記者などを経てフリージャーナリストに。著書に『安心のファシズム―支配されたがる人びと』『「東京電力」研究排除の系譜』など
取材・文/SPA!健康ファシズム取材班
― 厚労省が推進する[健康全体主義]の恐怖【7】 ―
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