「ユニクロ」と「H&M、ZARA」はどっちを買うべきなのか?【プロが判定】
―[メンズファッションバイヤーMB]―
メンズファッションバイヤー&ブロガーのMBです。洋服の買いつけという本業の傍ら、ブログやメルマガで「オシャレのルール」について発信していたところ、こちらで執筆させていただくことになりました。連載第34回目をよろしくお願いします。
▼ユニクロ、H&Mオススメのブランドは……?
手頃な価格で洋服が買える「ファストファッションブランド」。昨今のブームから日本でも、ユニクロや無印良品だけでなく、H&MやZARAなどの海外勢が出店し、より身近な存在となりました。「ユニクロもH&Mもデニムとシャツばっかりで大体同じだろ?」と思うかもしれませんが、実はそれぞれに特徴があり、用途に合わせた選び方があります。今回はファストファッションの賢い使い方を解説します。
▼海外勢はトレンド重視だが「質」に難あり?
通常のアパレルは、商品の企画から客の手に届くまで、概ね3か月~半年ほどの期間を要します。生地の確保や縫製などがあり、なかなかクイックに生産できないのが長年の問題点でした。ところが海外のファストファッションブランドH&MやZARAは、その期間を短縮し、企画からお店に並ぶまでなんとわずか数週間。「今流行っているものをすぐつくる」というトレンド消費型の開発志向になっています。
「今流行っているもの」が欲しいなら海外のファストファッションで買うべきです。ZARAのホームページを見てもわかるとおり、パッと見た印象は伊勢丹などの百貨店に入っている高級ブランドと遜色ありません。雑誌に載っているような「今が旬」なアイテムならば、ダントツでH&MやZARAがオススメです(そのぶん、既存のデザイナーズブランドは危機に瀕しているワケですが……)。
そう聞くと、「H&M最高じゃん」と思うかもしれませんが、もちろんデメリットがあります。それは「素材」です。「欲しいものをすぐつくる」という体制のため、「素材開発」にかける時間がありません。無難でありふれたチープな素材が目立ちます。例えば、メンズのウールコートはデザインがシンプルなため、素材のもつ質感、艶や風格などで勝負するところがあるのですが、H&Mなどではシルエットがよくても、貧弱で安っぽく見え、「なんか安物着ているなあ」という感じです。
一方、ナイロンなど、もともと高級感を志向していない素材であれば、ごまかしが効きます。H&Mのような風合いでも十分キレイに見えることがあります。海外勢は「今が旬」なものをつくるあまり「素材がおろそかになっている」というのが特徴です。
▼ユニクロ、無印良品などの日本勢は品質重視!
一方、日本のファストファッションブランド、ユニクロや無印良品は、海外勢とは真逆です。年単位の期間をかけてじっくりとつくり込むケースも少なくありません。「今が旬」なトレンドライクなものはつくれなくても、万人が納得できる定番アイテムを開発しています。実際ユニクロの「フリース」などは発売開始から何年も経っていますが、今も毎年驚異的な枚数が販売されています。「長く愛せるベーシック志向」はある意味「スローファッション」とも言えるでしょう。
例えば、無印良品では、定番品である「シャツ」について、定期的にアンケートを取り、改良を加えてホームページ上で公表しています。窮屈に感じる部分、シルエットの不満、素材の劣化などなど、客が不満に感じている部分を多岐にわたり研究し、改良を加えてさらなる完成度を目指しているのです。このあたりとても日本人的というか、丁寧で職人的な物づくりの姿勢がうかがえます。
日本勢は、海外勢に比べると「トレンド感はないけど、長く使えるコスパアイテム」という特徴があります。万人向けであることからデザインやシルエットは無難ですが、品質に関しては飛び抜けて優れています。
▼「いいとこどり」なユニクロの「大型店特別商品」
海外は「トレンド」、日本は「素材」とお互いトレードオフの関係ではあるのですが、しかし、実は「いいところどり」もあるのです。それがユニクロの「大型店特別商品」です。
「大型店特別商品」とは各都道府県で指定された大型店約160店舗のみで扱う特別商品で、ファッション感度の高い特殊な商品をリリースしています。世界的なデザイナー「ジルサンダー」とのコラボシリーズである「+J」も、この「大型店特別商品」でした。「万人向けではない、おしゃれさん向けアイテム」として限定展開しているのです。
この特別商品、シルエットやデザインも海外勢に劣らないうえに、素材は従来のユニクロ的な超高品質を実現しています。まさに「いいとこどり」です。おしゃれに興味のないオジサンや中学生が見たら「着方がわからん!」「細すぎる!」と思うようなアイテムなので全国展開はしていませんが、「格安で今が旬のおしゃれをしたい!」と思う人にはうってつけ。海外と日本のいい部分を融合した、マストバイなラインナップです。
ファストファッションは、トレンドライクなものか、長く使えるものか、用途に応じてブランドを選ぶといいでしょう。また「どちらも欲しい!」という欲張りな方はユニクロの「大型店特別商品」だけを狙うのがオススメです。私が配信しているメールマガジンでは、具体的にどのアイテムがオススメなのかを解説する「ファストファッション・マストバイ」という企画を連載しています。気になる方はぜひそちらもチェックしてみてください。 <文/MB>ファッションバイヤー。最新刊『MBの偏愛ブランド図鑑』のほか、『最速でおしゃれに見せる方法 <実践編>』『最速でおしゃれに見せる方法』『幸服論――人生は服で簡単に変えられる』など関連書籍が累計200万部を突破。ブログ「Knower Mag現役メンズバイヤーが伝えるオシャレになる方法」、ユーチューブ「MBチャンネル」も話題に。年間の被服費は1000万円超! (Twitterアカウント:@MBKnowerMag)『MBの偏愛ブランド図鑑』 今着るべきブランド60の歴史や特色を、自身が愛用する品とともに徹底紹介 |
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