第523回

8月10日「家庭用ゲームVSスマホゲーム」

・ゲームはもともと極めて商業的なコンテンツとしてスタートしたものだ。最初は誰も文化だなんて思ってなかった。その反動として90年代あたりから作家性が尊ばれるようになったのは良いことだったと思うが、商業性に徹した領域があってもいいとも思う。

・ソーシャルゲームが出始めの頃、僕はこれがゲーム市場を根こそぎかっさらっていくとしか考えられなくてパニックになっていた。そのことを中村光一さんと話した時「劇場用映画とテレビドラマのような棲み分けがなされるんじゃないですかね」と言われて、目から鱗が落ちた。

・その予言は当たったと思う。ゲームの作品性や芸術性にこだわる古参のマニアにはソーシャルゲームを嫌う向きも多いみたいだけど、僕はスマホのゲームはドラマ、専用機のゲームは映画、と捉えることにしている。前者の方が濫造になりがちで収益に対する要求もきつくなるが、それゆえの傑作だって出る。後者の方が作家性を追求しやすいが、情熱が空回りすることも多々ある。1年間で100万人にリーチするなら前者。後者は1万人にしかリーチしなくても、100年後まで残る可能性がある。

・スマホゲームの、流れている時間にひも付いて共有され、SNSで拡散されていくという特性は、テレビドラマの、世情や流行やタレント人気に依存してブレイクしていくという特性に近い。専用機向けのゲームはその土俵に乗らず作家性を強く出し、とことん作り込み、劇場用映画のように一段階高くリスペクトされるクリエイティブ領域を確保していくべきだろう。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。