第522回

8月4日「レトロゲームとクラシックゲーム」

・”レトロゲーム”って言葉はよく使われているけど、それって正確にはいつ頃のゲームのことなのか。

・僕は70年代末のアーケードから80年代のファミコンのあたりと思っていたんだけど、最近のコアゲーマー世代=30代の人達と話したら、プレステやプレステ2あたりのタイトルがたくさん出てきた。プレステが出た頃(1994年)に小学生だった世代が今の30代なのである。

・レトロゲームという言葉は主観的なものなのだ。ただ、ゲームを歴史として語る場合は、あるくくりで共通認識しておかなければならない一群があると僕は思っている。ゲームが産業として文化として成立しようとしていた瞬間、ゲームの、ゲームならではの作品性が確立していった時期の名作群のことだ。今後レトロと区別して「クラシック」と呼ぼうと思っている。

・10代から50代くらいまでのゲーム好きが集まって、全員が知っているタイトルをあげていくとする……スーパーマリオ、ゼルダ、ドラクエ、FF……そこに並ぶのはただ懐かしいだけのタイトルではない。途絶えず新作がリリースされ続け、ずっと現役であり続けているゲームだ。そのほとんどが、今からおよそ30年前、1980年代後半にデビューしたものなのである。

・その頃、ゲームがある爛熟期を迎えていたということになる。思い起こしてみると、ゲーム機が劇的な進化をみる直前、クリエーターがハードスペックの制限と戦いながらいろいろな工夫をしていた頃だ。その成果として、瞬間的なヒットにとどまらず、その後も色あせないスタンダードとなる作品が続々と生まれたのである。当時の現場でいったい何が起きていたのか、改めて検証してみるべきだろう。

・音楽の世界で「クラシック」とは単に「古い」という意味ではない。時代を超える様式を獲得した作品群のことをそう呼ぶ。そして狭義では場所と時期を「ヨーロッパの1750 ~1820年代」に限定している。ゲームにおいて「クラシック」という言葉が使われるとしたらこれが「日本の1980年代」になるだろう。この定義から、ゲーム史そしてゲームの系譜をまとめ直すというのはどうだろう。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。