第124回

03年7月7日「奇遇ですね」

・事務所の近所の神社でぼんやりしていたらいきなり「よお渡辺くん」と声をかけられた。ハドソンの大里プロデューサーと、そしてあの広井王子さんだ。

・見ると他にもハドソンのお偉いさんがずらりと揃っている。『天外魔境』シリーズを再開するにあたって、お祓いをしてもらいに来たという。このあたりは大里さんが生まれ育った場所なんだそうだ。「ここの境内にはなぜかいつも渡辺浩弐さんがいるって巫女さん達が言ってたよ」だって(苦笑)。

・ところで天外魔境の、特に『II』は10年も前の作品なのにいまだに根強い人気で、マニアショップではPCエンジン本体ごと高額で取引されている。再リリースは本当に嬉しい。

・このシリーズはハード戦争に巻き込まれて不幸な運命をたどってしまったが、本当はドラクエやFFと肩を並べるタイトルになるべきだった。いや広井さんはまだまだ若いから、今からでも遅くない。新作に大期待。


03年7月8日「低予算超大作の秘密」

・フルスロットルもT3もいいけど、ハリウッドのパワーは金にあかせたSFXアクションだけではない。というわけで掘り出し物の傑作を発見した。コリン・ファレル主演の『フォーンブース』。

・ニューヨークの雑踏。たまたま通り掛かった公衆電話のベルが鳴り、男は思わずその受話器を手に取ってしまう。すると「電話を切ったら命はないぞ」という声。そして照準器の赤い光が自分のシャツの上を動く……電話ボックスに閉じこめられたまま、恐怖と戦慄は加速していく……。

・たった一つのシチュエーションだけで物語は激しくドライブしていき、一瞬も飽きさせない。アイデアの勝利である。予算をかけてSFXに頼らなくても今風のスペクタクルは作れるのである。その場合最も重要なのはもちろんストーリー。この映画の脚本にクレジットされているラリー・コーエンという名前にB級ホラー・マニアなら狂喜するだろう。『悪魔の赤ちゃん』や『スタッフ』といったカルト・ムービーを監督している偉人。生きてたんだ!!

・それから監督のジョエル・シューマカーには本作品と似たテイストで『フォーリング・ダウン』という逸品がある。真面目な中年サラリーマン(マイケル・ダグラス)が都市の普通の風景の中でどんどん狂い、暴走していく話。ビデオ屋さんで見かけたら絶対借りてみて。

03年7月9日「業界人って……(その21)」

・とあるパーティー会場で若い業界人に「あー、あなた、見たことあるよ、えーとゲームの人だよねえ? なんつったっけ」と馴れ馴れしく声をかけられた。「はい、飯野賢治です」と答えたら「そうそう、飯野さんだ、いつも見てるよ、がんばってね」と納得されてしまった。飯野さんごめん。

2005.09.09 |  第121回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。