大阪・ミナミに行くといつも感じることがある。東京が失ったどこか猥雑で淫靡な空気。煽情的な看板、ド派手な店構え、客引きのお兄さん、お姉さん、そして酔客がそれらを冷やかして歩く。この界隈で“発明”された水商売がやがて東京に流れてくることも多く、俺にとっては夜遊びの教科書的な街だ。
とりわけ人で溢れる宗右衛門町界隈を流していたら、目に飛び込んできた遊郭風の佇まい。角地に白提灯に暖簾、そして朱色の引き戸、酔客や観光客が足を止めている。はて、ここは飛田か松島か!?
格子の中で花魁姿の女のコが手招き……
ガラガラと引き戸を開けると、目に飛び込んできたのは「張見世」と呼ばれる格子。その中には一段高くなった畳敷きの部屋があり、そこをぐるりと囲んだカウンターに座ると、盛装した遊女たちが、手招いてくる。ここは遊郭を模したガールズバーなのだ。
外の喧騒から一気にタイムスリップしたような異空間。うろたえていると法被を着た女性番頭がやってきて、システムを説明してくれる。飲み放題の「お殿様の巻(5000円/60分)」コースを所望すると、枡に入った日本酒と乾き物が用意された。枡の角に盛られた塩をちびちび舐めながら格子戸の中の遊女たちを眺めるが、正直目移りしてしまう。豪華絢爛の遊女がしっぽりとお出迎え
格子戸から手を出しての呼び込みにグッとくる。不思議な高揚感と背徳感。最初に声をかけてくれたちはやちゃん(20歳)に、コースに含まれていた「小判一両(女のコのドリンク券)」を手渡し乾杯。お殿様気分を味わうため、店に常備されている「バカ殿ヅラ」をかぶってみる。
小判を払ったことをいいことに、ちょんまげを触ってもらう“狼藉”を働く俺。目線の先に、ちはや太夫の白い膝小僧が目に入る。これは日本酒が進む……。遊郭と言えば、我々おっさん世代には五社英雄の映画『吉原炎上』の暗く、淫靡なイメージがあるが、若いコたちには蜷川実花の『さくらん』のロックでビビッドな世界がクールでカワイイのだそう。
「女性のお客さまも多いですし、これを見て、ココで働いてみたいと言ってくれる女のコもいるんですよ」とちはや太夫。格子戸の中の遊女たちもこのきらびやかな衣装と世界観がお気に入りだと言う。
さらに、インバウンドでミナミを訪れた外国人も多く訪れるよう。
「英語・中国語などに堪能な女のコもいますし、ポケトーク(翻訳機)も用意してありんす(笑)」
事実、お店のインスタグラムには店内で撮ったきらびやかな写真がズラリ。許可を取れば店内での「ばえる」撮影は可能なのだ。東京にも遊郭をテーマにした店はあるが、ここまでこだわったものはない。さすがミナミ。俺の想像のナナメ上をついてくる。
【OIRAN de ENJOU~炎城】住:大阪府大阪市中央区東心斎橋2-6 三ツ寺ギャラクシービル5号館1F
電:06-6212-5516
営:20時~翌4時
休:日曜
料:45分3000円(日本酒・ソフトドリンク飲み放題)、60分5000円(すべて飲み放題)
※女性はコース料金からすべて500円引き
撮影/加藤 慶
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苫米地 某実話誌で裏風俗潜入記者として足掛け5年。新天地でヌキを封印。好きなタイプは人妻
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