現役東大生が分析した「ブラック企業の見破り方」

「ブラック企業は投資の手法で見分けられる!」。過酷な長時間労働や低賃金などを強いるブラック企業が社会問題化して久しい。そんななか、冒頭の主張をするのは、先月25日、実例をもとに、ブラック企業が発生する原因を分析した初の著書『進め!! 東大ブラック企業探偵団』(講談社刊)を上梓した大熊将八氏だ。

現役東大生が伝授する、ブラック企業の見破り方「四季報ではなく“IR情報”を読み込め!」大熊将八氏

大熊将八氏(中央)。取材は就活生向けのセミナーイベントの最中に行われた。周囲はそのセミナー受講者

 大熊氏は、『僕は君たちに武器を配りたい』などの著書で知られるエンジェル投資家の瀧本哲史氏が主宰するインカレサークル、通称「瀧本ゼミ」に学ぶ、現役の東大経済学部4年生。「過酷な長時間労働やパワハラなどブラック企業の発生には背景があり、投資データにこそ、その徴候が現れる」と語る本人に詳細を伺った。

――本題の前に、まずは本書の出版経緯から教えて下さい

 私の所属する瀧本ゼミでは、財務諸表や現地取材などを通じて、該当企業が投資に値するかどうかを見分ける活動を行っています。そこを本書の担当編集の方に目をつけていただいたのが、スタートですね。日本の企業に余裕がなくなり、国全体が厳しい状態になっていく中で、どうやったら良い企業と悪い企業を見抜けられるかを伝えるため、「NewsPicks」で約3か月間連載した後、書籍化のための加筆修正をして仕上げました。

――なぜ、日本にブラック企業が増加しているのでしょうか?

 一言で言えば、日本全体に余裕がなくなっているからです。かつては国全体が、労働人口が増加することで経済が成長し人材への投資に還元されていく幸せなサイクルにあった。しかし、それが限界にきている。事実、企業が人材育成に投資する金額は全盛期のわずか20.8%。つまり8割も減少しています。グローバル化、IT化という激しい変化の波に耐えきれない企業が続出し、人を大切にしない、使い捨てるという風潮が広まっています。

――著書では、外食産業、マスコミ、金融、家電メーカーを取り上げていますが、とりわけ昨今の外食産業のブラック化は深刻な問題です

 第一にほとんどの外食チェーンはここ20年間、いかに安くて美味しいものを提供するかを追求してきました。しかし、拡大路線を取るうち、味やサービスの質での差別化だと、人材管理が難しく、手の込んだ複雑なオペレーションを回せなくなってきた。その結果、安さだけが差別化要因になり、それを実現するため極限まで人件費を削り、雇う人数を減らして、安く長時間こき使うという構造ができてしまったのです。

 ブラック企業の代表格として語られがちな「ワタミ」や「ゼンショーHD」には共通点があり、ワタミは盛り付けの手間がかかる料理、すき家は牛すき鍋膳という、安さ以外の手間のかかる味の部分で、差別化しようとした。その結果、限界まで人を切り詰めているのに複雑なことをやらせざるを得なくなり、現場が崩壊してしまったのは皆さんご存知のとおりですよね。

現役東大生が伝授する、ブラック企業の見破り方「四季報ではなく“IR情報”を読み込め!」――そんな外食産業におけるホワイト企業はどこでしょう?

 拙著でも取り上げた寿司ロボットを作る「鈴茂器工」。さらに中古の厨房用機器を買取・販売している「テンポスバスターズ」といった外食業界の周辺メーカーですね。飲食店同士で激しい競争を繰り広げる中、彼らに武器を配る“武器商人”が儲かっているのです。

 昨今、「飲食店は9割が潰れる」と言われていますが、それでも新規出店が後を断ちません。テンポスバスターズは自社でも飲食店を出して経営ノウハウを学ぶ一方、安値で最適な厨房機械を仕入れて、飲食店出店者に卸しています。少しでも初期コストを下げたい出店者側からしたら、独自の販売ノウハウを持っているテンポスバスターズはとてもありがたい存在ですからね。ただし、社員の平均年収は低いので、「勝ち組企業」ではあるが「ホワイト企業」と言えるかは難しいところです。

――では、そんなブラック企業とホワイト企業を判断するための投資データとは?

 一番わかりやすいのは、有価証券報告書に載っている「キャッシュフロー計算書」を見ることです。これは本業で稼いだお金や投資に使ったお金、借り入れ・返済について記した表のこと。お金の流れを追うことで企業の安定性や成長性が予測できます。

現役東大生が伝授する、ブラック企業の見破り方「四季報ではなく“IR情報”を読み込め!」「ゼンショーHD 第34期 第2四半期報告書」

「ゼンショーHD 第34期 第2四半期報告書」(同社HPより)。財務諸表は企業HPのIR情報などで確認できる

 主に営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローの3つがあり、営業はプラスで伸びているのが健全。投資はきちんと設備投資をしているマイナスの状態が望ましい。財務は借り入れと返済のバランスなので、一概にどちらがいいとは言えませんが、プラスは借り入れ超過のことなので、あまりにもそれが多い場合は急激に借金を増やしている状態なので注意が必要です。

 つまり売上げや利益が伸びていても、営業キャッシュフローがマイナスだったり、財務キャッシュフローばかり伸びているのはかなり危険。無理して借金をし、売上げを伸ばしているからです。転職や就活の際は、『四季報』の前期売上や利益の項目を見るだけではなく、企業HPのIR情報などでここまでチェックしておけば、のちのち後悔しなくて済むでしょう。 <取材・文/日刊SPA!取材班 撮影/神谷美寛>

進め!! 東大ブラック企業探偵団

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