更新日:2014年08月27日 18:58
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“反日デモ後遺症”に喘ぐ在中・日本企業の窮状――芸能人も日系企業CM出演お断り!

日系企業

在中邦人の命をも脅かした反日暴動

 悪夢の反日デモから1年余りが経過した。警戒されたデモの再発もなく、中国在住の日本人は、一様に胸を撫で下ろしている。  しかし、ビジネス面では今なお去年の傷跡を引きずっているようだ。  反日デモ前、中国市場で最高30%を越えていた日本車のシェアは、昨年11月までに8%まで低下。トヨタ、ホンダ、日産、マツダの4大日系自動車メーカーの販売台数は、前年比で約3割減となった。  こうした傷跡は、今なお癒えていはいない。今年1-8月の日本車販売は、前年同期比でトヨタが5.3%減。日産が同6.6%減、ホンダも2.9%減となっている。中国市場全体が10.3%の拡大を見せているなか、後遺症に喘ぐ日本企業の姿が見て取れる。 ⇒【写真】標的にされた日本車
https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=515498
日系企業

多くの日本車が標的にされた

 日本車不振の原因となったのは、反日デモと並行して行われた日本製品の不買運動だ。ネット上では、日系企業や日本ブランドがリスト化された出所不明の文書が出回り、ボイコットが呼びかけられた。  不買運動を呼びかけていたのは、ただの愛国者だけではない。自動車メーカー社員として北京市に駐在している男性は話す。 「中国のニュース番組では、反日デモについてほとんど触れられていなかった。にもかかわらず、西安でトヨタ車を運転していた男性がデモ隊に襲撃されて半身不随になったニュースは、犯行当時の生々しい映像付きで何度も繰り返し放送されていた。さらに『日本車には恐くて乗れない』という市民のコメントが差し込まれたものもあり、何ものかの意図を感じずにはいられませんでした」  こうして不買運動の中で押された“敵性商品”の烙印は、今なお払拭することもままならない状況だという。大手広告代理店の上海駐在員の男性は話す。 「ネットメディアや雑誌は、『ネット市民や読者から批判の声が上がる』ことを理由に、日本企業の広告は受け付けないというところが多い。反日デモ以降、テレビ局側の要請で中止されていた日本企業のテレビCMは、徐々に放送されるようになってきていますが、人気芸能人を起用しようにも、『売国奴認定される恐れがある』と事務所が及び腰です」  日本企業が古傷の痛みを引きずる中、影でほくそ笑んでいるのは誰なのだろうか。 <取材・文/奥窪優木>
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

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