マツダ「デミオ」がベンツやBMWに勝てた理由
2014-2015日本カー・オブ・ザ・イヤー(以下COTY)はデミオが受賞。今年のCOTYは票が割れた大接戦でした。マツダは一昨年のCX-5に続いてのCOTY受賞。スカイアクティブテクノロジーで大躍進中のマツダですが、デミオがCクラスやi3、レヴォーグなど、(COTY選考上の)ライバルを抑えた理由は何だったのか?
西村直人=文 Text by Nishimura Naoto
◆個性溢れる“今年の10台”でデミオがCOTYだったのはなぜ?
選考委員59人により投票が行われた第35回日本カー・オブ・ザ・イヤー。昨年は圧倒的な得票数で、輸入車として初めてVWのゴルフがCOTYに選ばれたが、今年はデミオとCクラスのガチンコ対決となった。10ベストカーがユニークであったことから選考委員の評価も大きく分かれたのだが(筆者はCクラスに10点)、興味深いのは国産車対輸入車という構図に加えて、クラスや価格帯が大きく違う2台が競い合ったことだ。結果デミオがCクラスに19点の差をつけた。デミオはどこが優れていたのか?
コンパクトカーであるデミオのもっとも秀でたところは、ボディサイズがクルマの価値を左右していないことだ。過去にも「小さくて、高級」を謳い文句にしたコンパクトカーは世界中に存在したが、運転にかかわる根本的な要素に至るまで上級モデルと同じように作り上げたクルマは数少ない。見た目こそ上質で高級感を漂わせていたとしても、それはいわゆる見かけ倒しで、実際に運転してみるとシートサイズが極端に小さかったり、ステアリングの中心位置が身体の中心線と正体していなかったりするなどの理由から適正なドライビングポジションがとれず、結果的にストレスを感じてしまうコンパクトカーは、いまだに多い。
その点デミオは兄貴分のアクセラにも採用されているシート骨格や、アテンザと同等の各部調整機構をそのまま採り入れ、十億円単位の開発費用を厭わずアクセルやブレーキペダルを正しく踏める場所に配置した。運転席に座った印象は、アクセラやアテンザなどの上位モデルと遜色なくしっくりとくる。ナリは小さいが骨太なのだ。
さらにデザインだけでなく走行性能でも世界中で高い評価を得ているマツダだけに、デミオには新開発の1.5リッターターボディーゼルと1.3リッターガソリンの2タイプのエンジンを用意し、それぞれにMTとATを組み合わせ、走りの質も上位モデルと同レベルにそろえている点も高評価を得た。
これら以外にも、メーター上部に速度や簡易ナビルートなどを表示して、運転中の視線移動を減らすヘッドアップディスプレイを搭載するなど、ドライバー協調型の安全装備が与えられた点も、サイズが価値を左右しないことの表れだ。
ぜひディーラーに足を運んで、実際に確かめてほしい。
<1位>マツダ デミオ/2014-2015 日本カー・オブ・ザ・イヤー
マツダが誇る最新技術「スカイアクティブテクノロジー」をふんだんに採り入れたデミオ。クラスで唯一、ディーゼルエンジンを搭載していることでも注目を浴びた。シャープな顔立ち+エッジの効いたデザインも特徴。後席は先代よりもコンパクトになった
⇒【後編】に続く https://nikkan-spa.jp/740425
【2014-2015 日本カー・オブ・ザ・イヤー得点表】
1位「マツダ デミオ」423点
2位「メルセデス・ベンツ Cクラス セダン」404点
3位「BMW i3」340点
4位「スバル レヴォーグ」124点
5位「スズキ ハスラー」65点
6位「ニッサン スカイライン」41点
7位「プジョー308」41点
8位「ジープ チェロキー」15点
9位「ホンダ N-WGN/N-WGN カスタム」13点
10位「トヨタ ヴォクシー/ノア」9点
※COTYの選考方法は、選考委員が25点の持ち点を10ベストカーのなかで「今年の一番」と思うものに10点を入れ、残り15点を4台に1~9点の範囲で配点する
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