更新日:2022年07月10日 11:12
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専門家が危惧する空前の猫ブームに潜む危険。価格高騰、捨て猫事情に影響も

変化し始めた昨今の捨て猫事情

 一方、ペットショップで販売される純血種と違い、野良猫=「飼い主のいない猫」を保護して里親を見つける動物愛護の活動を続ける猫ボランティアは、この空前の猫ブームを冷静に見つめている。  保護活動の最前線で活躍する猫ボランティアの多くは、ブームが去った後のことを危惧している。それはペットブームの後に必ずやってくる、無責任な飼い主によるペット遺棄だ。昨今、様々なところで動物愛護が叫ばれているにもかかわらず、自分勝手な理由でペットを捨てる飼い主は驚くほど多い。引っ越し、同棲解消、飽きた、なつかない、吠える、鳴く、子犬や子猫が産まれて増えた、病気など理由は様々だ。  過去も大型犬がブームになれば山林でシベリアンハスキーが野犬化し、小型犬が人気になれば動物愛護センターのケージにチワワが並ぶ。ここ数年はペットとして人気のウサギやカメの遺棄も増加している。  残念ながら猫の遺棄は以前から少なくない。日本での猫の飼育状況は「アメリカンショートヘア」「ロシアンブルー」といった純血種を飼っている人が約2割、野良猫のような雑種を飼っている人が約8割になる(一般社団法人ペットフード協会調べ)。  今までも純血種の捨て猫はあったが、ここ最近は少し様子が変わってきている。長年、猫の保護活動を続けるボランティアの活動地域で、前述した純血種「マンチカン」×「スコティッシュフォールド」(推定3歳)と「マンチカン」×「アメリカンショートヘア」(推定2歳)が保護されたという。家から脱走した可能性もあるので警察、動物愛護センターに届け出をだし、街の各所に迷い猫のポスターを張り出したが、数ヶ月経った今も飼い主からは連絡がない。おそらくペットショップかブリーダーで購入した飼い主が捨てたのだろう。  最近、ペットショップやブリーダー直販サイトで雑種を「ミックス猫」と呼び、人気の純血種を交雑した猫が販売されている。愛らしい容姿の特徴が混じり、純血種より価格も手頃で、個性的な容姿だとジワジワ人気が出ている。これは単純にかわいい容姿をデザインしているだけでなく、ブリーダー側による理由も少なくない。 「まず、限られた頭数の繁殖で血が濃くなるのを防ぐためです。しかも、安い純血種同士の猫でも容易に作れることが最大の利点でしょう。なかには望まない異種交配で生まれた猫をミックスとして販売することもある」(都内のブリーダー)  一般的に雑種の猫は身体が強く、長生きすると言われているが、脚が極端に短い「マンチカン」や脚の関節に変形や痛みの問題が起きやすい「スコティッシュフォールド」の交配は危険だと異を唱える愛猫家は多い。  巷で猫ブームが過熱化する中、人気になりつつあるミックス猫が保護されるようになった。しかし、前述した猫ボランティアたちの地道な活動(去勢避妊、保護、譲渡、啓蒙など)により、猫の殺処分数は10年前から約3分の1にまで減少した。だが、現在も年間約8万頭の猫が殺処分されている(猫の殺処分推移 2004年度23万8929頭→2014年度7万9745頭/環境省調べ)。
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一方で、プラスの面も
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